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新人飼育係と水たまりのカエル
 └─ 2023/07/14
 徐々にカエルの鳴き声が夜を賑わす季節となってきました。カエルの新人飼育係がカエル採集で驚いた出来事を紹介します。

 現在、多摩動物公園の昆虫生態園では、アズマヒキガエル、ヤマアカガエル、モリアオガエル、アイフィンガーガエルの計4種のカエルを飼育展示しています。以前展示していたシュレーゲルアオガエル1匹が、6月に死んでしまい、展示再開に向けて採集のために園内を探していました。

 シュレーゲルアオガエルは、本州、四国、九州に生息していて、湿地や田んぼといったジメジメしたところにいる比較的見つけやすいカエルです。しかし、捕まえようと探してもなかなか見つけられずにいました。


シュレーゲルアオガエルの成体(現在は展示していません)

 そんなときに「園内にシュレーゲルアオガエルの幼生(オタマジャクシ)がいるかもしれない」との話を聞きました。実際にその場所に行ってみると池や川のような大きな水辺ではなく、ショベルカーのタイヤの跡に水が溜まっただけの場所でした。

 水は墨のような黒さで、底が見えません。手を入れてみると水深は3cmほどで生ぬるく感じました。こんなところにいるわけがないと思いながらも探してみると、水面がぴちぴちと音を立てて波立ちました。姿も形もわからないまま網を入れると、3cmほどの幼生が網に入っていました。

オタマジャクシがいた場所
真っ黒な水たまり

 なぜこのような場所に幼生がいるのでしょうか? 正確な理由はわかりませんが、梅雨の時期で水たまりが大きくなっていた場所を池と勘違いして、その脇にある積まれた廃棄ウッドチップの中に産卵したのではないかと考えます。カエルのなかまは種類によってさまざまな場所に産卵しますが、シュレーゲルアオガエルは水辺の土の中に産卵をします。採集してきた幼生は、現在昆虫園のバックヤードで飼育しています。


採集したシュレーゲルアオガエルの幼生

 カエルの幼生は、おもに水中の藻や虫の死骸を食べますが、飼育下ではゆでた小松菜を与えています。水中でユラユラと揺れる小松菜を上手に泳ぎながら食べます。だんだんと大きくなってきていて、後肢が生えてきた個体も出てきました。展示できる日まで楽しみにお待ちください。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 碓田〕

◎シュレーゲルアオガエルの展示公開まで
 2023年07月14日:「飼育係と水たまりのカエルのその後」を掲載しました。
 2024年01月06日:「シュレーゲルアオガエルの展示を開始しました」を掲載しました。

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