ンゲゲゲゲ、ンゲゲゲ。ギャッ ギャッ ギャッ……
上野動物園両生爬虫類館のバックヤードからカエルのこんな鳴き声が聞こえてきます。春から夏にかけて、水田をおもなすみかとするカエルは繁殖期を迎えます。そのためバックヤードでは日中でも、ときおりにぎやかに鳴いています。
顔の両側にある鳴嚢(めいのう)と呼ばれる袋を膨らませながら、ンゲゲゲゲと野太く鳴いているのはトウキョウダルマガエルです。水田を代表する種で、もともと関東地方に多く生息していましたが、今では生息地の減少などで激減し、東京都のレッドリストではもっとも高いランクに位置づけられ、都内では絶滅が心配されています。

鳴いているシュレーゲルアオガエル
上野動物園では、このように野外で減少している動物の繁殖に取り組んでいます。繁殖を成功させるためには、四季の温度変化をつけ、とくに冬期に寒さを経験させることが重要と言われています。
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交接中のトウキョウダルマガエル | 交接中のシュレーゲルアオガエル |
そこで、昨年(2015年)から一部のカエル類の飼育部屋を変更し、空調や外気を利用して四季を再現した環境で飼育を始めました。冬場は4℃程度まで温度を下げ、水苔の中や水中で越冬させます。冬眠から覚め、活発化した今、トウキョウダルマガエルをはじめ、数種のカエルのオスが鳴き声とともにメスに抱きつくようになりました。繁殖期はもう本番です。まだまだ試行段階のため、今年どこまで成功するかわかりませんが、繁殖につながるよう取り組んでいきます。
〔上野動物園は虫類館飼育展示係 坂部あい〕
(2016年06月03日)