暑さも和らぎ、秋の風を感じる季節になってきました。2023年7月14日に掲載した
「新人飼育係と水たまりのカエル」のその後についてお伝えします。
最近のシュレーゲルアオガエル
真っ黒な水たまりのなかで採集したシュレーゲルアオガエルのオタマジャクシ(幼生)ですが、前回の掲載後、後肢が生えてくる個体が増えました。体が大きくなるとともに、後ろ足が尾の付け根の部分から生えてきます。野生では、後肢が生えてきてもまだ陸上に上がることなく、水中での生活を続けます。
前足が生えてくるころから、水だけだった水槽内に陸地をつくり、いつでもカエルが陸に上がることができるようにしました。陸地には薄いレンガを使い、少しでも上りやすくするためにスロープを付けました。個体によって成長スピードの差があり、遅れて上陸した個体は体が小さい個体が目立ちました。
上陸直後はまだ長い尾が残っていて、その尾を引きずるようにして陸地と水辺を行き来しています。上陸したての幼生は、成体と幼生の特徴が混ざりあっていますが、その状態は徐々に変化していきます。
幼生は水中でくらしているため、魚と同じようにエラ呼吸をします。しかし、上陸するとヒトと同じ肺呼吸に変わります。
また、カエルは両生類のなかで唯一尻尾がないことが特徴です。そのため分類上では「無尾目」(むびもく)と呼ばれます。オタマジャクシの姿からカエルの姿になっていくことを「変態」といいますが、変態の最終段階で成体になる際に、尾は体に吸収されます。
木に登るシュレーゲルアオガエル
幼生のころのえさはゆでた小松菜でしたが、上陸後は成体と同じコオロギを与えています。みなさんが草むらで見つけるようなサイズのコオロギはシュレーゲルアオガエルの幼生よりも体が大きく、カエルの方が食べられてしまうおそれがあるため、米粒より小さい、孵化したてのコオロギを与えています。
シュレーゲルアオガエルは、昆虫生態園のアカハライモリとトウキョウサンショウオを展示している水槽に追加する予定です。アカハライモリとトウキョウサンショウオは水の中や陸地でくらす両生類です。シュレーゲルアオガエルは木に登ることのできる両生類なので、違いについてぜひ観察してみてください。
もう少し体が大きくなったら公開します。公開まで楽しみにお待ちください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 碓田〕
◎シュレーゲルアオガエルの展示公開まで
2024年01月06日:
「シュレーゲルアオガエルの展示を開始しました」を掲載しました。
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