昨年生まれたチンパンジー「ディル」(オス)は、2023年6月7日に1歳になりました。
母親の「ミカン」は初めての子育てですが、とても順調に成長しています。生まれてからしばらくのあいだは、ミカンに抱かれてすごしていたディルですが、生後4ヵ月ほど経つと、ハイハイができるようになり、室内では格子状の扉に掴まって立ちあがるようになりました。
1歳をすぎた今では、自由に歩きまわるだけではなく、物を持ちあげたり、天井の格子を雲梯のように使って移動したりと活発です。また片手だけでロープやワイヤーに掴まり、自分の体重を支えられるほど、力も付きました。ミカンはそんなディルをそばで見守り、少し離れた場所でも自由に遊ばせていますが、ディルになにか起こればすぐに駆けつけて抱きしめます。
【動画】最近、活発なディル
ディルは、食べ物にとても興味があるようです。生後5ヵ月ほどで、ミカンが食べこぼした欠片などを拾っては口に入れるようになりました。初めは半ば遊びのようでしたが、だんだんと歯が生えそろうにしたがって、食べ始めるようになり、最近ではなんでも積極的にチャレンジしています。
ミカンと同じように植物の枝葉や、サツマイモやニンジンといった根菜、キャベツやレタスなどの葉野菜、トマト、パプリカを食べるようになりました。飼育係がミカンに食べ物を手渡すと、それが初めて見るものであっても、ディルも興味津々に受け取りに来ます。ただ、キーウィだけは酸っぱかったのか、一度口にして以来、まったく受け取りにきません。
ニンジンを食べようとするディル
活発になったディルは、ほかの子どもやおとなのチンパンジーたちとよくコミュニケーションをとっています。特に今年で4歳になる「イブキ」(オス)や「プラム」(メス)はよい遊び相手です。この2頭は、幼いながらも年下のディルに対しては手加減をします。けれど、つい夢中になって度がすぎ、ディルが嫌がるようすを見せると、駆けつけたミカンに怒られてしまうこともあります。
また、おとなのチンパンジーたちもディルに優しく接します。なかでも若いメスのチンパンジーたちはディルに興味津々で、遊び相手になるだけでなく、グルーミングをしたり、抱いたり、背中に乗せたりします。しかし、どのおとなでもよいわけではなく、ミカンが気を許せる仲のよいおとなでない場合は、ディルを抱き寄せて離してしまいます。
【動画】若いメスの「ベリー」と遊ぶディル
子どものチンパンジーは群れの中ですごし、多くの個体とコミュニケーションを取りながら、チンパンジーとしての生き方を学びます。ディルも母親や群れのなかまたちのすがたを見て、多くのことを学んでくれるでしょう。これからもディルの成長をあたたかく見守っていただければと思います。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 牧野〕
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