ニュース
チンパンジー「ピーチ」の成長──出産と子育て
 └─2019/10/25

 多摩動物公園のチンパンジー「ピーチ」が2019年8月25日にメスの子を出産しました。母の名前ピーチにちなみ、子どもは果物の英名から「プラム」と名づけました。

・関連記事「チンパンジーが生まれました!」(2019年9月12日)

 ピーチは今回の出産が2回目です。1頭目を産んだときは子育てをしなかったため、飼育係がしばらく育てることになりました。今回の出産も育児を放棄してしまう可能性があったので、いくつかの対策を講じてきました。

 さいわいにも、同年4月に「モモコ」が出産しており、出産の瞬間も動画に収めることができました。そこで、モモコの出産動画をピーチに見せたり、アクリル板ごしにモモコ親子とのお見合いを繰り返しおこなったり、ピーチが出産や育児への興味をもつよう工夫しました。


動画を見て学ぶピーチ

 実際、ピーチはモモコ親子に対し、興味をもってよく観察していました。また、臨月の8月に入ってから、ふだんから仲のいい「ナナ」というメスのチンパンジーと終日一緒に過ごさせ、出産時にピーチがパニックを起こしても、少しでも落ち着けるような環境の準備を進めました。

 出産当日、心配をよそにピーチはパニックを起こすことなく出産を終え、子を抱いていました。しかし、最初の数日は子を安定させる抱き方がわからなかったようで、片手で持ち上げたり足で挟んだりしていました。また、授乳のしかたもわからなかったらしく、最初はうまくプラムを胸に近づけることができませんでした。


プラムに授乳中のピーチ

 私たちもひやひやしながら観察していましたが、2日目には初めて授乳が確認されました。そして時間が経つにつれてお腹にしっかりと抱くようになり、授乳も安定して確認されるようになりました。

 現在は、少しずつようすを見ながら群れに入れる練習を慎重に繰り返してところです。ピーチは群れの中で優位な個体なので準備はスムーズに進んでおり、すでに来園者の方にも見える状態です。

・関連記事「10月10日からチンパンジーの子「プラム」を公開!(2019年10月8日)

 チンパンジーでは、初産で育児放棄してしまっても2頭目から子育てをすることがあると言われています。ピーチもその例にあてはまるのかもしれませんが、前回の出産の後、他個体の子育ての観察や、群れにいるこどものチンパンジーとの関わりを通して、ピーチなりに成長したのだと思います。今後、プラムの成長とともに母親になったピーチの行動の変化にもぜひご注目ください。

・関連記事(同じく人工哺育で育った「ジン」の成長と群れ入り)
 「チンパンジー『ジン』の成長」(2010年5月7日)
 「人工哺育のチンパンジー『ジン』、養母とともに群れ入り成功!」(2010年8月12日)
 「飼育係の見たチンパンジー『ジン』の群れ入り」(2010年8月13日)
 「誕生から10年、チンパンジー『ジン』の現在」(2018年7月6日)

〔多摩動物公園北園飼育展示係 佐藤澄音〕

(2019年10月25日)


ページトップへ