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チンパンジー「ジン」の成長
 └─2010/05/07

 多摩動物公園では、人工哺育で育ったチンパンジーのジン(オス)が2010年5月で1歳10か月になりました(関連ニュースはこちらをごらんください)。最近のようすを少しお話ししましょう。

 生まれてからずっと続けてきた群れのチンパンジーたちとのお見合いから、ジンはサザエ(推定28歳)との相性がよく、サザエに養母となってもらうことになりました。サザエと娘のミル(7歳)との同居が12月から始まり、一時、高熱やひどい咳などの重い風邪の症状のため分離したこともありましたが、5か月が経過し、同居も成功しています。

 最初は、初めて触れるおとなのチンパンジーであるサザエに近寄るのを怖がっていたジン。そのため、ミルとばかり関係が深まり、サザエとはほとんど接触をしないような日が続いていました。

 しかし、ミルが3頭だけの生活に飽きてきてしまったのでしょうか、ジンへの接し方が荒くなり、ジンが悲鳴を上げることが増えてきたのです。そんな時、サザエは必ずジンのようすを見に行きます。さらに、ジンの食べているものをミルが横取りするとサザエが叱り、ジンが部屋の移動を怖がるとそっと背中を指で押してやったり、出入口で何時間もジンを見つめて待ったりするまでになりました。それからというもの、日に日にサザエとの接触が増えて、そしてとうとうサザエがジンを抱きかかえ、ジンがサザエのお腹にしっかりとつかまるようになったのです。

 今では、夜間はもちろんサザエのお腹の上で毛づくろいされながら眠ります。サザエのジンに対する行動の一つ一つは愛情以外の何ものにも見えず、本当の親子のようです。

 暖かくなり、本格的に群れ入れが始まります。4月18日に、これからの新しい個体やジンの群れ入れのための工事を終えた非公開の放飼場にジンたちを出しました。体験したことのない広さの場所で、一生懸命ロープをつかみ、高いところに登ってミルと追いかけっこする姿は、彼の成長をもっとも感じられる光景でした。チンパンジーはチンパンジーに育てられるのが一番なのだなと改めて実感した瞬間でした。

 群れのリーダーであるケンタとの同居も始まりました。これからも大変な日々が続くでしょうが、ジンは毎日がんばっています。群れの中でのジンの成長をぜひ見守ってください。

写真上から:
・ジン
・ジンとサザエ
・ケンタと同居中のジンとサザエ

〔多摩動物公園北園飼育展示係 木岡真一〕

(2010年05月07日)



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