シリーズでお伝えしてきた「南極レポート2016」。その後、南極採集で輸送した生物たちがどうなったか、気になっていた方もいるのではないでしょうか? ご安心ください。2016年2月21日、生物は無事に水族園に到着しました。そして3月末から「北極・南極の海」の水槽で一部の生物の展示が始まりました!
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グリプトノートゥス・アンタルクティクス | オキアミを抱えて食べているところ |
南極レポート[4]で登場した巨大な等脚類「グリプトノートゥス・アンタルクティクス」は、以前水族園で展示したこともありますが、今回の南極採集によって久しぶりのお披露目となりました。現地では、ちぎれた海藻が海底に集まったような場所に隠れているということから、水槽にもちぎれた海藻を入れてあります。やはり落ち着くのか、この海藻の中に潜り込むようにして隠れています。
しかし、なにせ体長10センチほどもあるので存在感は隠せません。よく見るとお尻がはみ出していたり、海藻の下からごつごつした脚が見えたりします。えさはオキアミなどを与えていますが、先端がカギ状になっている3対の前脚で大事に抱えるようにして食べます。
ヒモムシ「パルボルラシア・コッルガトゥス」
また、前回お知らせしたヒモムシ「パルボルラシア・コッルガトゥス」も展示中です。彼らの口は、細い体の先の方にあります。お腹側にスリット状に開いているのがそれです。この口を使って自分の体より大きなえさを丸飲みにするようすは衝撃的です(ヒモムシの動画は
こちらのニュースページでご覧ください)。
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スリット状の口 | 瞬間的に出し入れされるヒモムシの吻 |
ヒモムシのなかまは、口とは別に長い吻をもつことが知られています。吻は獲物を探したり捕らえたりするときに使いますが、ふだんは体の中にしまわれていて見えません。口の近くに吻を出し入れする穴があり、えさを探すときに出てきますが、食べるときにはもうしまわれています。その出し入れはとても素早く、油断していると見逃してしまいます。
今回ご紹介した南極のニューフェイスたちは2種とも名前が長く、舌がからまりそうです。これにはわけがあって、どちらも日本の周辺には生息していないため、日本語の名前がついておらず、学名のカタカナ読みになっているのです。ちょっと呼びづらい名前ですが、お許しを! ぜひ、葛西臨海水族園に会いに来てください。
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南極レポート2016[1]出発直前情報
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南極レポート2016[2]中継地点プンタアレナス
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南極レポート2016[3]南極到着! 海軍貨物輸送船でプンタアレナスからキングジョージ島へ
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南極レポート2016[4]生物の調査採集
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南極レポート2016[5]生物を輸送する
〔葛西臨海水族園飼育展示課 高濱由美子〕
(2016年04月08日)