南極での採集は無事に終了し、いよいよ生物を輸送する段階に入りました。
南極から葛西臨海水族園までの輸送にかかる時間は、およそ 80~100時間です。生物を海水と共にビニール袋に入れて、クーラーボックスで運びます。
エスクデロ基地での輸送作業
キングジョージ島周辺の海の水温はおよそ1℃なので、水温を維持するためにクーラーボックスの中にたくさんの氷を入れて輸送します。氷は、海に流れ着いた流氷を使用します。過去の採集では基地の周辺に流氷がなく、手に入れるのに苦労しましたが、今回は海岸にたくさんの流氷が流れ着いていて、簡単に手に入れることができました。
まず、キングジョージ島からチリ空軍の輸送機でチリ最南端の街プンタアレナスへ輸送します。そして、プンタアレナスから水族園までは、首都サンチャゴを経由して民間の航空機で輸送します。
チリ空軍の輸送機で生物を運ぶ
長い輸送時間を考慮し、途中のサンチャゴで海水の入れ替え作業をおこないます。いまサンチャゴの季節は真夏で、気温は30℃にもなるため、輸送会社の冷蔵倉庫の中で冷やしておいた海水を使います。保冷氷も追加した後、日本に向けて発送します。
このメルマガをみなさんが読むころには、生物は水族園に到着していることでしょう。生物は一旦、裏側の水槽で「餌づけ」などをおこなった後に展示します。私たちは生物を発送した後もチリ国内に残り、次回の採集の打ち合わせをして、使用した採集機材を片付けた後、帰国することになります。
南極の生物の展示は、多くの人の協力によって実現しています。エスクデロ基地の方々やチリ南極研究所、機材や生物の輸送に協力してくれたチリ海軍、空軍。そして、中継地のサンチャゴやプンタアレナスでの協力者など、多くの人の協力と調整があって、初めて実現しているのです。
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南極レポート2016[1]出発直前情報
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南極レポート2016[2]中継地点プンタアレナス
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南極レポート2016[3]南極到着! 海軍貨物輸送船でプンタアレナスからキングジョージ島へ
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南極レポート2016[4]生物の調査採集
・南極レポート2016[5]生物を輸送する
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南極レポート2016[6](最終回)そして展示へ
〔葛西臨海水族園調査係 中村浩司〕
(2016年03月04日)