井の頭自然文化園水生物館では、かつて身近な水辺で普通に見られたアカハライモリを飼育し、展示しています。その展示水槽や裏の繁殖用水槽で観察された、イモリたちの興味深い姿をお伝えするアカハライモリ特集第5回です(過去の記事は末尾をご覧ください)。
前回、繁殖期になってオスの尾が青っぽく色づいたというお話をしました(
新たな視点[28]オシャレに色づくオスの尾っぽ:アカハライモリの婚姻色)。
イモリのオスたちは自分の子孫を残すため、その色づいた尾を巧みに使ってメスたちに一生懸命アピール(求愛行動)をするのです。
メスの進行をさえぎるようにしつつ、青く色づいた尾を細かく揺らすオス
イモリのオスは、繁殖の準備が整ったメスを見つけると、自分の体でメスの鼻先を通せんぼするようにして、婚姻色の出た尾をピラピラと細かく振ります。メスがその気になってくれるまで、体を右に左に入れ替えてアピールが続くのをよく見ます。
メスのスイッチが入るとオスは尾の振り方を変え、クネクネとゆっくり左右に振りながら、メスを先導するように前進し始めます。メスはすぐ後ろをついて行きますが、このときオスは「精包」と呼ばれる精子の詰まった塊を放出し、水底に落とします。精包はすぐ後ろを歩いていたメスの総排出腔から取り込まれ、産卵するときはこの精子で卵を受精させます。
【動画】求愛行動を撮影した動画。急に始まったのでピンボケや手振れはご容赦を。
残念ながら最後はメスが精包の上を通過してしまい、精子の受け渡しは失敗に終わる
この求愛行動の最中、オスもメスも相手に作用するフェロモンを出していることがわかっています。オスは『ソデフリン』、メスは『アイモリン』。この命名には研究者のセンスが光っているのですが、それはまた別のお話。
次回はメスも尻尾を振って求愛行動をする?というお話の予定です。
・アカハライモリ特集
第1回:
続々・新たな視点で見てみると[25]ひょっこり顔出し憎めぬしぐさ:アカハライモリの愛嬌
第2回:
続々・新たな視点で見てみると[26]食べる、飲み込む、噛みつく:アカハライモリの食事
第3回:
続々・新たな視点で見てみると[27]そんなもの美味しいの?:アカハライモリの隠れた好物
第4回:
続々・新たな視点で見てみると[28]オシャレに色づくオスの尾っぽ:アカハライモリの婚姻色
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕
(2019年05月17日)