クロホシイシモチのユニークな卵の育て方

2026年11月6日

葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「海藻の林」水槽では、クロホシイシモチという魚のとてもユニークでおもしろい行動を見ることができます。クロホシイシモチは、全長約8cmのテンジクダイ科に属する魚です。体色は赤みを帯びており、頭部に黒い斑点が一対あるのが特徴です。

さて、このクロホシイシモチをよく観察していると、下顎が膨れてしゃくれたような見た目になっている個体がいることがあります。これは、「口内保育」をしている最中のオスです。口内保育とは、卵を口の中に入れて外敵から守り、孵化するまで育てることで、「マウスブリーディング」とも呼ばれています。

クロホシイシモチはふだんは数百匹の群れでくらしていますが、繁殖期の温かい時期になると群れのなかにオスとメスのペアができはじめます。メスは一度に数千個の卵を塊で産み、オスが卵に精子をかけます。その後、オスはすぐに卵を口に含み、孵化までの約7~10日、口の中で卵を守り育てます。このあいだオスはえさを食べません。

ペアでいるようす
ペアでいるようす

水槽内では6月初旬から口内保育が見られるようになりましたが、その少し前の5月初旬からえさを食べる量が増えて、ふだん与えているえさの量ではまったく足りず、量を増やす必要がありました。もしかすると繁殖に備えて、エネルギーを蓄えるためにえさをたくさん食べていたのかもしれないですね。飼育係としても、勢いよくえさを食べる姿は見ていて気持ちがよかったです。

9月に入ると口内保育をおこなう個体が増え、一気にえさを食べる量が減り、少し寂しい気持ちになりました。

また、この時季はパクパクと口を動かしながら卵を口から出し入れしているところを見ることができます。これは卵に新鮮な海水を届け、十分な酸素を供給しているところです。決して卵を食べているわけではありません!

口を開けて海水を取り込んでいるようす
口を開けて海水を取り込んでいるようす

このようなユニークでおもしろい行動をおこなうクロホシイシモチを間近でじっくり観察できるので、ぜひ注目してみてください!

〔葛西臨海水族園飼育展示係 小林大聖〕

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