標本を“動かして”わかること

2026年9月11日

葛西臨海水族園では、生きている生きものだけでなく、さまざまな標本を展示しています。生きものの骨格標本や液浸標本など、見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。

タイトルを見て、「標本が動くの?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。多くの標本は、標本自体が固定され作製後に動かすことのできないものがほとんどですが、標本によっては動かすことができるものもあり、動かすことでわかることがあります。今回は、先日作製したイセエビの標本を紹介します。

イセエビのなかまは、第二触角の根本付近に発音器官があり、こすりあわせて音を発します。とくにイセエビは、この音で威嚇すると言われています。ただ、水槽内でこの行動をすることは少なく、開園中に音を聞く機会はめったにありません。

水槽内で飼育しているイセエビのなかま「アカイセエビ」
水槽内で飼育しているイセエビのなかま「アカイセエビ」

ある日、バックヤードで飼育しているイセエビが脱皮したため、脱皮殻の乾燥標本を作製しようと思いましたが、足がいくつか取れていました。そのまま標本にすると体のつくりを正しく紹介できないため、このような場合、多くは捨ててしまいます。ですがこのとき、発音器官のことを思い出し、触角を動かすことでイセエビが出す音を聞くことができる標本を作ってみることにしました。

関節が動く乾燥標本をつくるときには、グリセリンという薬品を使います。はじめにグリセリンを浸透させることで、関節の柔軟性を保ったまま乾燥標本にすることができるのです。

イセエビの触角付近のみ乾燥させ、関節にペーパータオルを使ってグリセリンを浸透させたところ、関節が動く乾燥標本が完成しました! グリセリンで滑らないように発音器官を少し水で濡らすことで、音もしっかり出る標本に仕上がりました。私自身、全身ではなく体の一部をグリセリンで浸透させる標本は初めてだったので心配でしたが、無事完成し一安心です。

今回作成したこの標本は、情報資料室のカウンターで不定期に展示する予定です。実際に動かしてみると、関節の部分がうまくこすれて音が出ることがわかります。

展示されていないときにも用意できますので、お気軽にスタッフまでお声がけください。標本を触って動かして、生きもののおもしろいところに気がつくと、水槽で見たときにさらにおもしろい発見があるかもしれません。

〔葛西臨海水族園教育普及係 津山透〕

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