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外国産トキたちの繁殖(1)ショウジョウトキとムギワラトキとクロツラヘラサギ
 └─ 2023/09/15
 多摩動物公園内の外国産トキ舎で展示しているトキ類は春先から夏にかけて繁殖期を迎え、その時期に多種多様なひなが見られます。今回はそのようすを部屋ごと3回に分けて紹介します。第1回はショウジョウトキ、ムギワラトキ、クロツラヘラサギの3種です。


外国産トキ舎の配置図

ショウジョウトキ

 ショウジョウトキは、来園者から「フラミンゴだ!」という声が聞こえることがあるのですが、赤い羽色が特徴のトキです。繁殖期になるとさらに鮮やかな赤に変化します。一方でひなは天敵に見つかりにくい黒っぽい翼と白っぽい体のため、巣立ってからもしばらくは成鳥とはまるで別種の鳥のようです。同じケージでムギワラトキを飼育していますが、ショウジョウトキの若鳥の首から体全体を覆う灰色の羽はとても似ています。


巣にいるころのショウジョウトキのひな
(2022年10月撮影)

 現在は昨年生まれの若鳥と幼鳥がおり、赤い羽に混じって灰色の羽が残っているので、若鳥の羽が灰色から朱色に生え変わる来年7月ごろまではそれぞれの成長段階で色の変化を比較することができます。


左からムギワラトキの成鳥とショウジョウトキの若鳥、幼鳥、成鳥
(2023年8月12日撮影)

ムギワラトキ

 ムギワラトキは高い止まり木の上に自ら巣材を整えて巣をつくります。特に今期は2ペアが両隣に営巣し、最初は1組のペアがオスとメスで違う巣に座っているのかと思うほどの距離で抱卵していました。野生での主な生息地であるオーストラリアでは、同じクロトキ属のオーストラリアクロトキやほかのムギワラトキのペアと巣が連結するほど集まって繁殖するため、体がぶつかりそうなほど近くに営巣することもあるようです。

 最初は落ち着いて抱卵していましたが、2つの巣で計3羽が孵化して育ち始めると、隣り合った巣の親どうしが侵入者を防いで各々のひなを守るかのように、つつき合いをすることもありました。そして驚いたことに、ひなが歩き回るようになると互いの巣を行き来し始め、3羽のひなを4羽の成鳥が育てる不思議な群れになったのです。


このころは3羽のひなが2つの巣を自由に行き来していました
(2023年7月12日撮影)

同居したクロツラヘラサギ

 今年は6~7月に1羽だけ別種の幼鳥が同じケージの地面にいました。それは人工で育ったクロツラヘラサギです。人工育雛である程度成長したあとに無事に群れに入れるよう、人では教えられないほかの鳥との交流の仕方、羽ばたき方の練習や水中のえさをとって水浴びすることを学ばせるため、ほかの鳥といっしょにしたのです。

 1羽だけ真っ白な体で、人が来ると大声で鳴き、飼育係にとって存在感のある個体でした。7月上旬には無事に園内の非公開施設にいるクロツラヘラサギの群れに入っています。


若いクロツラヘラサギは黒面(くろつら)ではありません
(2023年6月14日撮影)

〔総務部野生生物保全センター保全係 村山〕

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