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トキ舎、繁殖に向けて
 └─2020/05/22

 春になると、多摩動物公園のトキ舎のトキのなかまたちは繁殖期を迎えます。野生のトキ類は木の上や岩棚で営巣に適する場所を見つけ、巣材となる枝や落ち葉など運び込んで巣を作ります。

 しかし、飼育下ではそういった繁殖に適した場所や巣材はそろっていません。飼育係が巣台を作ったり、巣材をケージ内に入れたりするなど、繁殖のための環境を整える必要があります。これまで進めてきた繁殖期のための準備についてご紹介します。

 現在、トキ舎には9種類のトキ類がいます。今年は、数が減ってきたムギワラトキと昨年(2019年)繁殖が難しかったアンデスブロンズトキを対象に、適正な個体数を長期的に維持することを目的として2種の繁殖に取り組むことにしました。

 ムギワラトキは毎年、来園者から見て左側にある長い巣台で繁殖しています。しかし、今年は数の多いショウジョウトキに追いやられたせいか、なかなか巣作りが進みませんでした。そこで、ムギワラトキが追いやられていた場所の止まり木に新しく巣台を設置し、繁殖を促すことにしました。その後、繁殖の準備が整ったショウジョウトキが落ち着いたためでしょうか、ムギワラトキは新しい巣台を使わず、例年と同じ場所で繁殖を始めました。無事産卵も見られたので一安心です。


左側が新しく設置した巣台。右側が毎年繁殖している長い巣台

 一方、アンデスブロンズトキの巣台があった木が枯れてしまったため、新しい巣台を2つ作成し、昨年自然繁殖に成功した巣台の近くに取り付けました。私の作成した巣台は少しいびつな形になり、アンデスブロンズトキが使用してくれるか不安でしたが、取り付け後しばらくしてから1ペアがこの巣台を物色し始め、気に入ってくれたのか巣材を運んで来るようになりました。


新しく設置した巣台を使用しているアンデスブロンズトキのぺア

 巣台の設置が整い、各ペアが自分たちの巣台が決まる頃に合わせて、今度は営巣のための巣材を準備することにしました。巣材はレッサーパンダが残した笹を再利用しています。この笹をほどよい長さに切ってケージ内に置くと、あっという間に運んでいきます。


準備した巣材を運ぶアンデスブロンズトキ

 こうして繁殖の準備が整ったアンデスブロンズトキたちは、早いペアだと3月下旬に産卵し始めました。繁殖がうまくいけば、5月中にはひなが見られるかもしれません。

 今、多摩動物公園は臨時休園中でなので、トキ類のようすを見て頂くことはできませんが、無事開園したときには、ひなたちの元気な声でお出迎えできることを期待しています。

〔多摩動物公園野生生物保全センター 田中美晴〕

(2020年05月22日)


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