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チンパンジー「ミカン」、初めての出産
 └─ 2022/07/04
 お知らせしたとおり、6月7日午前5時7分にチンパンジー「ミカン」が元気なオスの子どもを無事に出産しました。今回の妊娠は、野生由来の血統を持つ「デッキー」の精液を用いた人工授精によるものです。

 飼育下のチンパンジーでは、初産の場合ほど子育てをしない可能性が高いと言われています。そのため、私たちはミカンが落ち着いて出産できるように準備を進めました。ミカンは警戒心が強く、些細な変化にも反応してしまうナイーブな性格です。そんなミカンが安心してすごせるように、出産が近づいたころから、夜は母親の「モモコ」、弟の「イブキ」と同じ部屋にしていました。また、人工哺育に切り替わることも考え、人工哺育器を用意するとともに、監視カメラとセンサーカメラを設置して24時間ようすを確認できるようにしました。

 6月7日の朝、ミカンが子どもを抱いている姿を見て、私たち担当者は一安心しました。今回はカメラの映像から、母子のようすをご覧いただきます。


【動画】ミカンの出産

 ミカンは子どもをしっかりと抱きかかえながら生活しています。移動するときやえさを食べるときも、子どもが落ちないように空いた片方の手を添えて支えます。

 授乳は、生まれたその日から確認することができました。ミカンにしがみつきながら、しっかりと口を動かして母乳を飲んでいます。子どもはほとんど寝ていることが多いのですが、時折、目を開けたり、手足を動かしたりと、元気なようすです。


【動画】子どもの授乳

 また、同居しているイブキは、のぞき込んだり、さわってみたりと子どもに興味津々です。将来はよき遊び相手になってくれるでしょう。


【動画】イブキ、赤ちゃんにふれる

 ミカンが子育てに専念できるよう数日間は群れと分けていましたが、子育ては順調で子どもも元気なため、6月13日から群れに戻る練習を始めました。格子越しのお見合いや同居を繰り返しおこなっています。

 群れのメンバーの反応はさまざまで、すぐに興味を失う場合や、子どもを興味津々に見続ける場合もあります。ミカンは相手によって態度を変え、念入りにあいさつを交わすこともあれば、1度だけあいさつをして、その場を離れてしまうこともあります。ミカンが、それぞれのメンバーをどのように思っているかがよくわかるので、おもしろいです。また、ミカンはほかの個体どうしで争いが起こっても、巻き込まれないように距離を置き、うまく立ち回っています。

 今後群れ入りが進んだあとに、一般公開をおこなう予定です(時期未定)。

 なお、子どもの名前は、父親のデッキーから1文字もらい、野菜を由来としてハーブの名前である「ディル」と名付けました。成長をあたたかく見守っていただければと思います。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 牧野〕

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