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ヒドリガモの繁殖
 └─井の頭 2025/10/11
 ヒドリガモは、カルガモより少し小さめのカモです。冬になるとユーラシア大陸から日本に渡ってくる冬鳥で、井の頭公園の池にも飛来します。

 井の頭自然文化園では、水生物園ツル舎の弁天門側から数えて4番目の部屋で展示しています。比較的よく鳴くカモで、ピューイ、ピューイ、グワッ、グワーッとにぎやかです。一方で休むときは植物の葉の陰にじょうずに隠れています。

 今年も4月ごろに産卵が始まりましたが、巣ではなく、地面にぽろぽろと産み捨ててある卵がいくつかありました。そこでそれらの卵は全て回収して孵卵器で人工的に温めました。すると、およそ25日経過した5月下旬にひなが孵化し、3羽が成長しました。

 ひなが小さいうちは温度管理のできる部屋の中で育てますが、1週間くらいすると、昼間に屋外で日光浴や水浴びをさせるようにします。


日光浴するヒドリガモのひな(2025年6月2日撮影)

 ひなの成長にしたがって、日光浴や水浴びの時間を徐々に長くしていき、水浴び用のプラスチック容器などを利用したプールも深く大きくしていきます。ほかのカモやコールダックのひなは2週間くらいで自らプールに入って水浴びをしたり、泳いだりしているのですが、今年生まれのヒドリガモのひなたちはなぜかプールに入らないのです。

 3週間をすぎたころ、成鳥が入るのと同じくらいの大きさの池に誘導して入れたところ、3羽ともあわてて池から出てきてしまいました。「このままでは泳げないカモになってしまう?」──そう考え、これ以降は池に誘導したあと、しばらくは水から上がらないように飼育員がガードしていました。その姿はまるでバスケットボールのディフェンスのようでした。初めのうち、ひなたちは水に浮かぶときに脚をばたつかせて、体を左右に揺らしていました。


泳ぐ練習をするヒドリガモのヒナ(2025年7月10日撮影)

 あわててバタつくとなぜか後ろに進んでいましたが、泳ぎの練習をするうちに、バタつかずにスーッと水に浮いていられるようになりました。そして、8月の終わりごろに無事ツル舎にデビューしました。

 現在、今年生まれの3羽は成鳥と同じ大きさですが、全体的に黒っぽい羽色をしていて、一緒に行動していることが多いです。ツル舎にお越しの際は、どうぞのぞいてみてください。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 佐々木〕

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(2025年10月11日)


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