井の頭池のカモにまつわるお話、第2回はヒドリガモの賢い採食方法についてご紹介します(
第1回はこちら)。
カモには採食方法の違いによって、泳ぎながら水面付近の水草などを食べる「水面採食性カモ」と水中に潜ってえさを取ることができる「潜水採食性カモ」に分けられ、ヒドリガモは前者で、キンクロハジロは後者にあたります。
ヒドリガモは、水辺を歩いてえさを探したり、水面近くの水草を水面からおしりを出すようなポーズで食べたりしています。一方、キンクロハジロは、深さ10mぐらいまで潜ることができるので、水面だけでなく、池の底の方に生えている水草も食べることができます。
そんな2種のカモが池の中でいっしょに行動している姿をよく見かけたので、じっくり観察してみると、おもしろい食事風景を見つけました。
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写真1:キンクロハジロとヒドリガモ | 写真2:キンクロハジロを待つヒドリガモ |
水面で水草を探すヒドリガモがキンクロハジロのそばにぴったりと寄り添いながら泳いでいます(写真1)。ヒドリガモは、ザブンと頭から水中に潜ったキンクロハジロの行き先をじっと見つめています(写真2)。そして、キンクロハジロが水面に顔を出した瞬間、ヒドリガモは、その周りで一生懸命何かを探しています。実は、キンクロハジロが食いちぎった水草の端切れが水面に浮いてくるのを待ち、見つけしだい頂戴して食べていたのです。
写真3:ヒドリガモとオオバン
ちなみに、ヒドリガモはキンクロハジロだけでなく、同じく冬に井の頭池に飛来する潜水採食性のオオバンからも同じ方法で水草をもらっていました(写真3)。時にはくちばしから直接奪い取ることも。ヒドリガモが身につけた、効率的に水草を取る採食方法に水鳥の環境適応力の高さを感じました。
井の頭池に秋に渡ってきたカモたちは、長旅の疲れを癒すかのように、毎日えさ探しに励んでいます。春にはまた子育てのために約4,000kmの長旅が控えています。井の頭池でしっかり栄養をつけて、無事にその日を迎えてほしいものです。
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 下川優紀〕
(2022年12月12日)