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春に向けての準備
 └─ 2025/03/06
 春から秋にかけて鳥たちは子育てに忙しい季節です。井の頭自然文化園水生物園の水鳥たちも、昨年の10月下旬にようやく子育てが終わり、飼育担当者もほっとひと息つきました。

 そして、「冬のあいだはのんびり……」と言いたいところですが、次の繁殖シーズンに向けて、さまざまな準備をしています。


ヒドリガモのオスとメス

 孵卵器(親鳥の代わりに卵を温める機械)や育雛箱(親鳥の代わりにひなを温め、育てるための箱)の点検や修理、ヨシ・オギや小枝などの巣の材料の調達、巣箱の作成や交換、そして擬卵(ぎらん)づくりです。

巣の材料のヨシやオギ
ヒドリガモの巣箱

 擬卵とは、本物の卵そっくりに似せて作った偽物の卵のことです。親鳥がうまく育てられないなどの事情で人がひなを育てる場合には、親鳥から卵を取り上げますが、卵がなくなると親鳥はまたすぐに産み足してしまいます。そこで、擬卵を巣に置くと親鳥は擬卵を自分の卵だと思い、そのまま抱いてくれます。こうすることで、産卵による親鳥の体力消耗を防ぐことができます。

 擬卵を作るためには見本となる本物の卵が必要です。そこで、文化園ではまずひながかえらない卵(無精卵)を使って卵の標本を作ります。

 卵の標本は、卵に小さな穴を開けて、注射器を使って少しずつ空気を送り込み、中身を出していき、中身がなくなったら、殻の中を洗って消毒し乾燥させて完成です。そしてこの卵の標本をもとにして、擬卵を作ります。シリコンで型を取って、その型に樹脂を流し込み、固まれば完成です。白色の卵はそのままですが、色や模様がある卵では色を塗ります。


シリコン型と擬卵

 親鳥から卵を取り上げるときに、同じ数の擬卵を代わりに置くようにして、鳥が卵を産み足すのを防ぎます。カモ類などは10個くらい産むものもいて、鳥によって擬卵はたくさん必要になるため、現在増産中です。

 いろいろと準備を進めているうちに、すでに一部の鳥では産卵が始まりました。焦りながら、作業をしているところです。もうすぐ春ですね。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 佐々木〕

(2025年03月06日)


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