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アメケンの深海調査航海リポート・マリアナ編
 その壱、熱水噴出孔とは?
 └─葛西  2010/07/30

 アメケンこと葛西臨海水族園の雨宮健太郎がお送りする「アメケンの深海調査航海リポート」がひさびさに戻ってきました。

 現在私は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の調査船「なつしま」に乗船して、マリアナ諸島の沖に来ています。船の周りには、真っ青な、まさに紺碧の海が広がり、水平線まで雲以外なにも見えません。大海原のド真ん中いることを実感しています。さて、ここから小笠原諸島の沖を通り、横須賀まで約2週間の調査航海が始まります。

 今回私が参加している研究航海の目的は、伊豆・小笠原諸島からマリアナ諸島にかけて、その海域に点在する熱水噴出孔周辺の生物について研究することです。

 無人探査機ハイパードルフィン(詳しくは下記のリンクをごらんください)で熱水噴出孔のある海底へ潜航して、そこにいる生物や生息環境の観察をおこないます。

 そして、そこにいる生き物のことを詳しく調べるために、一部の生き物を採集して持ち帰り、飼育して観察をします。その生物の飼育を水族園が担当させてもらうのです。

 熱水噴出孔という言葉を聞き慣れない方も多いのではないでしょうか。それは簡単にいえば、海底から湧く温泉のようなものです。しかし、温泉といっても、その温度は300℃にも達し、熱水とともに、いろいろな化学物質も噴出しています。

 中には、有毒な硫化水素などが含まれていることもあり、人間にとってはとても過酷な環境ですが、その熱水や化学物質を使って栄養を作り出すバクテリアなどの生物が棲んでいます。そして、そのバクテリアなどを利用したり餌にする生き物が集まり「熱水噴出孔生物群集」と呼ばれる生態系ができるのです。そこには深海とは思えないほど多くの生物が存在します。

 熱水噴出孔生物群集とは、いったいどんな生き物で構成されているのでしょうか。これから始まる潜航でその姿が明らかになっていきます。

 次回は熱水噴出孔生物群集に見られる生き物を紹介します。お楽しみに!

写真:調査機材満載で潜航を待つハイパードルフィン
(撮影協力:独立行政法人海洋研究開発機構[JAMSTEC])

アメケンの深海調査航海リポート
その壱
その弐
その参
その四
番外編

〔葛西臨海水族園飼育展示係 雨宮健太郎〕

(2010年07月30日)



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