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アメケンの深海調査航海リポート、その弐
 └─葛西  2008/07/04

◎暗黒の世界で見たものは……

 みなさん、1週間のご無沙汰でした。アメケンこと雨宮より、体験レポート第2弾をおとどけします。今回はいよいよハイパードルフィンが深海へと到着します。(ハイパードルフィンについては、先週の記事をごらんください。)

 紺碧の海にハイパードルフィンが潜って行くのを見送ってから約1時間半が経ったころ、やっとコントロールルームのモニターに海の底が見えてきました。さて、みなさんが“深海”と聞いて想像するのはどんな景色ですか?

 今回ハイパードルフィンが着底した海底は、水深 3,000メートルの平らな砂地でした。さっそくまわりを見わたしましたが、生き物が見えません。といってもそこは漆黒の闇、ライトが照らす範囲だけしか見えません(写真上)。

 少し海底付近を移動すると、やっとなにかが見えてきました。高さ30センチくらいの白っぽいものがニョキっと海底から立っています。これはガラスカイメンと呼ばれるカイメンのなかまです。その根元の部分にはクモヒトデのなかまも見えてました(写真中)。

 何回か移動はしたものの、生き物はあまり見つかりませんでした。じつは、深い海には太陽の光が届かなくなるので、植物が生きていくことができません。そのため、動物が生きるために必要な栄養は沈んでくる生き物の死骸などにたよるしかありません。

 しかも、水温は 1.6℃と低いうえ、強烈な水圧がかかります。このように過酷な深海は一般に生き物の少ない寂しい海になるのです。

 さて、「強烈な水圧」とはいったいどれくらいかというと、水の中では水深が10メートル深くなるごとに、1気圧ずつ気圧が高くなります。では、 3,000メートルの海底ではいったい何気圧になるかというと、なんと 301気圧にもなります。

 いったいどれくらいか想像もつかないと思います。そこで、中身を出したカップ麺容器をネットに入れ、ハイパードルフィンにしばりつけて 3,000メートルまで沈めてみました。その結果、見事に縮んで帰ってきました(写真下)。水圧のすごさがおわかりいただけましたでしょうか?

 そんな過酷な深海にも、多くの生き物がすんでいる場所があるのです。どんな生き物たちがどのようにして生きているのでしょうか? この生き物たちについては次回お伝えします。

写真上 水深3,000メートルの海底は静か~なところ
    だった(JAMSTEC)

写真中 ガラスカイメン。根元にクモヒトデがいる
    (JAMSTEC)

写真下 右がもとの大きさ。左が強烈な水圧でみご
    とに縮んだカップ(著者撮影)

リポート、その1

〔葛西臨海水族園飼育展示係 雨宮健太郎〕

(2008年07月04日)



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