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上野動物園のライチョウ保護への取組み──第4回「日本のライチョウを守るために」
 └─2019/03/02

 上野動物園では、都立動物園・水族園の冬のキャンペーン「Visit ほっと Zoo 2019」の一環として、「みてみよう 日本のいきもの ここがすごい!!」をテーマにしたイベント「うえの de にっぽん!」を開催しています。

 日本でくらす生き物たちに着目したこのイベントに合わせ、上野動物園におけるライチョウ保護への取組みを、何回かに分けてご紹介しています。

第4回 日本のライチョウを守るために

 上野動物園で最初にライチョウを飼育したのは1889年でした。低地でのライチョウ飼育は非常に難しく、すぐに死亡したと記録されています。
 長期の飼育に成功したのは長野県の大町山岳博物館で、繁殖と累代飼育をおこない、1963年から2004年まで日本で唯一のライチョウ飼育施設でした。細菌の活動が抑えられる高山にくらすライチョウは感染症に弱く、飼育にあたっては砂の殺菌や飼育舎周辺の消毒が特に必要だったそうです。

 野生個体の減少にともない、環境省は2012年にライチョウをこれまでのレッドリストII類(危急種)からIB類(絶滅危惧種)にランクアップしました。なかでも南アルプスのライチョウ個体群はこのままでは絶滅してしまう可能性があり、早急な対策が必要となりました。そこで同年に環境省・文部科学省・農林水産省が共同でライチョウ保護増殖事業計画を策定しました。野生のライチョウを守ると同時に飼育下でもライチョウを繁殖させて、やがては生息地に再導入する計画です。

 これまで同じような計画がつくられたのがニホンコウノトリとトキです。残念ながらどちらの種も野生個体は絶滅してしまいましたが、日本産と同じ亜種である中国産のニホンコウノトリとトキを動物園や飼育施設で増やし、現在では自然界に再導入しています。
 日本産ライチョウを飼育下で繁殖させるためには、別亜種であるスバールバルライチョウ飼育から得られた研究成果を利用することになりました。


最後の日本産トキ「キン」

◎「上野動物園のライチョウ保護への取組み」
第1回「ライチョウとはどんな鳥か」
第2回「日本のライチョウとスバールバルライチョウ」
第3回「なぜライチョウは減っているのか」
・第4回(本記事)
第5回「上野動物園でのこころみ」
第6回「ライチョウ公開にあたって」
◎関連記事
ニホンライチョウを公開します(2019年2月1日)

(2019年03月02日)
(2019年03月11日:連載最終回[第6回]までリンクを追加)


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