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上野動物園のライチョウ保護への取組み──第3回「なぜライチョウは減っているのか」
 └─ 2019/02/01

 
 上野動物園では、都立動物園・水族園の冬のキャンペーン「Visit ほっと Zoo 2019」の一環として、「みてみよう 日本のいきもの ここがすごい!!」をテーマにしたイベント「うえの de にっぽん!」を開催しています。

 日本でくらす生き物たちに着目したこのイベントに合わせ、上野動物園におけるライチョウ保護への取組みを、何回かに分けてご紹介しています。

第3回 なぜライチョウは減っているのか

 ライチョウという種のなかでも、日本産ライチョウは最も南の温暖な地域に分布しています。
 気温の下がった氷河期に日本のような温帯まで進出したものの、氷河期が終わると高い山の上で細々と生き残ってきたので、地球温暖化の影響を強く受けていると考えられます。冷涼な高山は細菌の活動も抑えられるため、山地の気温が上昇すると感染症の危険も増えてきます。また、これまで食物として利用してきた高山植物が、温暖化で減少してしまう可能性もあります。

 さらに直接ライチョウの生存を脅かしているのは、これまで高山には生息していなかった他の動物です。
 全国で個体数が増えているシカは高山まで進出し、ライチョウがえさにしていた高山植物を食べてしまいます。キツネやテンはライチョウを襲って捕食します。近年では、ニホンザルがライチョウを捕食した事例も見つかっています。

 捕食者の高山帯進出は、実は私たち人間の行動が原因となっています。観光客が弁当の残りや容器を捨ててしまうと、それを食べにキツネやハシブトガラスが集まり、結果的にこれまで生息していなかった標高の高い場所にも定着してしまうのです。

 また、観光客がライチョウを追いかけ回したり、写真を撮るためひなを手に乗せたりするといった姿も報告されています。こうした行動はライチョウにストレスを与えるだけではなく、高山には存在しないさまざまな病原菌を感染させてしまう危険もあります。

 1955年に国の特別天然記念物に指定されたライチョウは、こうしたさまざまな原因が重なって、急速に減少しています。1980年代には国内に3,000羽生息していると推測されましたが、2000年代には1,700羽程度になってしまいました。


冬羽の野生ライチョウのオス
(長野県栂池高原)

◎「上野動物園のライチョウ保護への取組み」
第1回「ライチョウとはどんな鳥か」
第2回「日本のライチョウとスバールバルライチョウ」
・第3回(本記事)
第4回「日本のライチョウを守るために」
第5回「上野動物園でのこころみ」
第6回「ライチョウ公開にあたって」

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ニホンライチョウを公開します(2019年2月1日)

(2019年02月01日)
(2019年03月11日:連載最終回[第6回]までリンクを追加)


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