上野動物園では、絶滅危惧種であり国の特別天然記念物である日本産ライチョウを飼育していますが、2015年9月5日と9月6日、それぞれ1羽の死亡を確認しました。
1.死亡した個体
死亡確認日時 2015年9月5日(土)21時58分
ひな番号 No.1(メス)
日齢 生後69日(孵化日:2015年6月28日)
死亡時体重 221g
死亡確認日時 2015年9月6日(日)7時38分
ひな番号 No.4(メス)
日齢 生後70日(孵化日:2015年6月28日)
死亡時体重 296g
※当初の雌雄判定(2015年7月16日発表)ではオスでしたが、解剖の結果、メスと判明しました。
2.死亡原因
不明(消化吸収機能の不良の疑い)
解剖所見 | ひな番号 No.1 | 内臓や筋肉に軽度の貧血が見られた。また心嚢水(しんのうすい)と腹水の少量貯留、肺の一部に出血が見られた |
ひな番号 No.4 | 全身に重度の貧血が見られた。また、心嚢水および腹水の貯留、心臓及び腎臓に点状の出血が見られた。 |
※消化吸収機能の不良の原因については、組織検査・細菌検査等を引き続き実施し、調査していきます。
※家禽の大量死につながる病原性細菌等は現在のところ見つかっていません。
3.死亡に至る経緯
飼育場所:東園ライチョウ孵化育雛施設 (※非公開)
室内温度:約20℃
主なえさ:ニワトリひな用のえさ、ウサギモルモットペレットを粉砕したもの、ケール、小松菜
状況 :幼鳥を育てるための育雛箱の中で全羽一緒に飼育していたが、8月28日(金)から
感染症対策のため金属製ケージに移動した。
ひな番号 No.1
8月28日(金) | | 感染症対策のため、育雛箱から金属製ケージに移動 |
8月29日(土) | | 体重減少が著しいため強制給餌。細菌または真菌への感染を想定した治療を開始 |
9月5日(土) | 14:00 | 水溶性下痢を確認。ブドウ糖液の経口投与 |
20:00 | 起立不能を確認 |
20:30 | 病院の保育器へ移動 |
21:58 | 死亡を確認 |
ひな番号 No.4
8月28日(金) | 感染症対策のため、育(いく)雛(すう)箱から金属製ケージに移動 |
8月29日(土) | 細菌または真菌への感染を想定した治療を開始 |
8月31日(月) | 強制給餌を開始 |
8月31日~9月5日 | 体重減少、食欲低下ではあったが、採食行動は確認されていた |
9月6日(日) | 7:00 | ふらつきが見られた |
7:20 | 動物病院の保育器へ移動 |
7:38 | 死亡を確認 |
今回の死亡で、上野動物園で飼育中の日本産ライチョウはいなくなりました。
4.ライチョウの国内飼育状況(2015年9月6日現在)
富山市ファミリーパーク:オス3羽
5.ライチョウ飼育の経過
6月5日
乗鞍岳から5卵を採取し上野動物園へ輸送
6月6日
上野動物園到着後、孵卵器に入れる
6月27日7時
3個の卵の嘴打ち(※1)を確認する。
6月27日18時〜6月28日4時
順次、5羽のひなが孵化する。
6月29日
すべてのひながえさを食べていることを確認。
8月26日
1羽目死亡(死因不明)
8月27日
2羽目死亡(死因不明)
9月4日
3羽目死亡(死因不明)
9月5日
4羽目死亡(死因不明[消化吸収機能の不良の疑い])
9月6日
5羽目死亡(死因不明[消化吸収機能の不良の疑い])
※1 嘴打ち:ひなが卵から出るために卵の内側からくちばしで卵の殻を割り始めること。

ライチョウのひなたち(2015年7月27日撮影)
◎過去のニュース
・
ライチョウが死亡しました(3羽目)(2015年9月4日)
・
ライチョウが死亡しました(2羽目)(2015年8月27日)
・
ライチョウが1羽死亡しました(2015年8月26日)
・
ライチョウのひな、順調に成長中、雌雄も判明(2015年7月16日)
・
ライチョウの卵の採取および上野動物園への輸送について(2015年6月7日)
・
ライチョウの飼育繁殖に取り組みます(2015年5月25日)
(2015年09月06日)