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2頭でいれば怖くない(?)、口之島牛と見島牛
 └─2009/01/23

 丑(うし)年を目前にした昨年(2008年)暮れ、上野動物園の子ども動物園に2頭の在来牛がやってきました。11月23日に口之島牛のメス「桜」、12月12日に見島牛のオス「初春」(はつはる)が子ども動物園にデビューしました。

 「在来牛」とは、古来より西洋種などと交雑せずに残っている牛。口之島牛は鹿児島県の口之島、見島ウシは山口県の見島で飼われていた牛。現存するする日本の在来牛は、この2種類だけです。(口之島牛と見島牛に関するニュースは、記事末尾↓をごらんください。動画ニュースもどうぞ!)

 当初、環境に慣れてもらおうと、2頭を別々の場所で飼育していましたが、いずれもまだ子どもですし(桜は2008年4月20日生まれ、初春は2007年12月31日生まれ)、2頭ともおとなしく、また、人にもあまり慣れていないので、いっしょに飼育すると落ち着くのではないかと考え、昨年(2008年)のうちに同居させてみました。

 2008年12月29日の休園日、担当者を含め5名の職員が万全の態勢をとって作業をおこないました。初春がいる曲屋(まがりや)の運動場に桜を入れたところ、初春の存在よりも、周囲のものものしい雰囲気に驚いていたようです。

 一方の初春は、突然自分のテリトリーに入ってきた桜を、寝小屋の中からこっそり覗いていました。しばらくすると、年上の初春が桜に近づき、2頭はおたがいに匂いをかぎはじめました。そして、頭を付き合わせて軽く押し合って力比べをしたり、相手の体の上に乗ろうとしたりしていました。桜の方が年下ですし、体も一回り小さいので、初春に圧倒されてしまうのではないかと思いきや、桜も負けていません。結局、争いは一切見られず、2頭はすっかり打ちとけました。同居開始後数十分もすると、ずっといっしょにいたかのように、つねに行動をともにするようになりました。

 2頭の同居後、私たちと牛たちの距離が少し縮まったように思います。2頭でいればコワくない、ということなのでしょうか? もともと初春は人間に少し興味を示していましたが、桜もその初春のうしろに隠れるようにして、人間に近寄ってくるようになりました。餌の時間になり、担当者のすがたを目にすると、跳ねながら駆け寄ってきます。「少し慣れてきたかな?」と思いながら私が運動場に入ると、桜はへっぴり腰で後ずさって行きます。慣らすのはそう簡単なことではないですね。

 初春は桜といっしょになったことで落ち着いたのか、餌を元気よく食べるようになりました。朝一番に運動場に行くと、餌を入れる容器が外に投げ出されていることもあります。初春のしわざにちがいありません。

 桜も初春と同じく落ち着きを見せるようになりましたが、もともとひかえめだった性格がさらに控えめになったように感じられます。2頭で餌を食べているときなど、とくに攻撃されたわけでもないのに、初春にゆずる行動が見られます。でも、「絶対食べたい!」というときは、桜もゆずりません。また、初春が運動場を駆け回っていると、桜もそれをまねしますが、まねるすがたが、ぎごちないような気もします。でも、そのすがたが、また愛らしいのです。

 日々成長する2頭──どんな口之島牛、そして見島牛に育つでしょう? みなさんもぜひ、子ども動物園の初春と桜に会いに来てください!

写真上:左=口之島牛、右=見島牛
写真下:左=見島牛、 右=口之島牛

〔上野動物園子ども動物園係 橋川真弓〕

 ・子ども動物園での口之島牛関連ニュース(その1その2
 ・子ども動物園に見島牛登場
 ・東京ズーネットBB動画「在来牛『口之島牛』来園!
 ・東京ズーネットBB動画「山口の在来牛、見島牛

(2009年01月23日)



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