ニュース
外国産トキたちの繁殖(2)アンデスブロンズトキとホオアカトキとインカアジサシ
 └─ 2023/09/30
 トキたちの春先から夏にかけての繁殖のようすを、部屋ごと3回に分けてご紹介しています。第2回は中央の部屋にいるアンデスブロンズトキとホオアカトキ、そしてカモメ科のインカアジサシです(第1回「ショウジョウトキとムギワラトキとクロツラヘラサギ」はこちら)。



アンデスブロンズトキ

 4月に私が担当となったときには、すでにいくつかのアンデスブロンズトキのペアは営巣し、産卵していました。その卵はきれいな青緑色をしており、多くのペアで3回ほど、1日おきに2~3個の卵を産みました。4月中旬には、最初の1ペアで3羽孵化しました。こんなに早く孵化するのは異例とのことですが、新人飼育係には初めてのことなので、前担当を見習って来年もこれを目指したいものです。

 しかし、今期は自然孵化(巣での孵化)と自然育雛(親による育雛)を目指していましたが、巣立つまでにはいたりませんでした。昨年度は人工孵化から数日間人工育雛をして仮親(育雛をまかせる別の親)に預けて繁殖が成功しましたが、今年の新たな取組みは残念な結果となりました。今回の問題点をよく調べ、来季に向けて管理方法や環境改善に取り組むつもりです。


3つの卵の世話をする親鳥(4月21日撮影)

ホオアカトキ

 ホオアカトキは野生では断崖の岩棚に営巣すると言われ、園内では飼育ケージ内に3mほどの人が覗き込めない高さの巣台を用意して営巣・産卵を促しています。4月の終わりに巣台内を一斉確認すると、飼育係が地面に置いた巣材をたくさん運んで上手に巣を作っていました。


孵化直後の雛と擬卵(4月28日撮影)

 ホオアカトキはほかの種よりも体が大きく、肉食性もやや強いため、飼育下では繁殖にかかわっていない個体がほかの巣の卵を狙って繁殖を邪魔することがこれまで見られています。そのため今年度は、ほかの鳥の卵や雛ではなくえさに注意を引かせるため、高たんぱくなミールワームやトキにも与えている馬肉飼料も与えてみました。その結果、親がほかの個体に邪魔されることなく育雛に集中できたと推測され、無事に7羽の雛が巣立ちました。

 巣立った幼鳥は成鳥と体格がほぼ同じで見分けがつきにくいのですが、特徴的な「ピルルルル…」といった鳴き声をやや控えめな声量で頭を上下させながら発し、親にえさを要求します。また、成鳥は顔に羽毛がありませんが、幼鳥は灰色の細かい羽毛が生えています。


幼鳥3羽と成鳥(右端)が並んで休憩中(6月14日撮影)

インカアジサシ

 インカアジサシも4月の終わりに巣を一斉確認しました。野生では、岩の割れ目や地面の窪みなどで営巣しますが、ネズミなどの侵入による食害の可能性もあります。園ではケージ内にコンクリートブロックなどを用意してその中での営巣と産卵を促しています。卵は茶色地に黒っぽい斑点があり、孵化数日後の雛の頭にも同じような斑点が見られます。


翼におとなの羽が生え始めた巣立ち前の雛たちと親鳥(5月25日撮影)

 3つの巣で2羽ずつ孵化し順調に6羽が巣立ちましたが、まだまだ親にえさをねだりつづけています。大きさや羽の形は成鳥とほとんど同じですが、色が成鳥と比べて茶色っぽく、嘴が真っ黒です。鳴き方も「ピーピー」と高く長めに鳴きます。


親におねだり中の巣立った雛(7月27日撮影)

 頭を低くしてほかの鳥に向かって鳴いているインカアジサシはもしかしたら今年生まれの幼鳥かもしれません。

〔野生生物保全センター保全係 村山〕

◎関連ニュース
トキの仲間たち、大移動!(2014年04月11日)
カンムリサケビドリが東園のツル舎にやって来ました(2015年03月13日)
ホオアカトキの巣箱の隙間でインカアジサシ繁殖(2016年09月09日)
トキ舎が繁殖ラッシュ、にぎやかです(2019年07月12日)
トキ舎、繁殖に向けて(2020年05月22日)
インカアジサシのひなの成長(2021年08月13日)
外国産トキの繁殖(1)ショウジョウトキとムギワラトキとクロツラヘラサギ(2023年09月15日)

(2023年09月30日)



ページトップへ