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インカアジサシのひなの成長
 └─ 2021/08/13
 2021年、トキ舎で7羽のインカアジサシが孵化し、成育しています。

 インカアジサシは、野生では天敵に襲われにくい断崖・絶壁などの、頭上や側面が岩で覆われた隙間などを好んで巣をつくります。多摩動物公園ではこの習性に合わせてU字溝やインカアジサシ用に作成した巣箱を繁殖巣として利用しているため、来園者のみなさんにはなかなかひなのようすをご覧いただけません。そこで、今回はインカアジサシのひなの成長についてご紹介したいと思います。

 今年は3月中に4ペアが産卵しました。インカアジサシの1回あたりの産卵数はたいてい2卵であり、合計産卵数は8卵でした。ペアは雄雌交代でおよそ1ヶ月間卵をあたため続け、4月には8個の卵のうち7卵が孵化しました。


孵化直後のひなのようす

 孵化直後のひなの体は濡れていますが、時間が経つにつれ体が乾いてくると、ふわふわな羽毛に包まれた姿になります。ひなの羽毛は灰色で、暗色の斑点があります。


孵化して1週間経った巣箱の中のひな2羽のようす

 ひなの食欲はとても旺盛で、巣の中からはピーピーとえさを求める鳴き声がよく聞こえてきます。親もこの要求にこたえるため、給餌の準備をするとまっさきに餌場に集まってきて、さっさとくれと言わんばかりにえさの入ったバケツをじっと見つめてきます。えさは主にキビナゴを与えています。キビナゴの大きさはおよそ10㎝ですが、親はひなにえさをたくさん運ぶために1度に2~3匹のキビナゴをくわえていき、ひなに口渡しで与えます。

 そんな親の努力の甲斐あって、ひなは日に日に大きく成長していきます。孵化後およそ3週間ごろになると、親がえさをもってくると巣の外に出て受け取ることが多くなりました。


巣の外でえさを受け取るひなのようす

 だんだんとひなの羽毛も成鳥と同じような羽へと変わっていき、孵化後5週間ごろにはふわふわだったひなの面影はすっかりなくなっていきます。そして6月には7羽のひなが無事に巣立ち、今では時々親に甘えてえさを求める個体もいるものの、自力で採食ができるようになりました。

 巣立った幼鳥たちは体の大きさこそ親と変わりませんが、その容姿はまるで違っていて、一目で区別がつきます。体の色は全身灰色で、成鳥では赤いくちばしや足はまだ真っ黒です。頬の黄色い部分もうっすらとしか発色しておらず、なにより特徴的なひげに見える白い飾り羽はまだちょびっとしか生えていません。成鳥と同じような姿になるには約2年かかります。


孵化後約3ヶ月の幼鳥のようす

 現在、成鳥11羽、幼鳥7羽ととても見分けやすいので、幼鳥たちのようすや変化を観察していただけたらと思います。

〔多摩動物公園野生生物保全センター 田中〕

(2021年08月13日)



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