多摩動物公園のサバンナでは、これまでに数多くのキリンの繁殖に取り組み、国内や国外(主に中国や韓国)の動物園にたくさんのキリンを搬出してきました。2022年6月末現在、当園で生まれて、搬出したキリンの総数は111頭です。繁殖した総数が196頭なので、生まれた個体の半分以上はほかの動物園に移動したことになります。
反対に、ほかの動物園などから当園へ来たキリンの総数は24頭ですが、そのうち10頭は野生個体で、それ以外の14頭のほとんどはオスです。実は国内の動物園で生まれて当園へ来たメスは、4頭しかいません。
その1頭目は、2003年に大森山動物園から来た「ルル」です。当園で2年半近くすごしましたが、群れになかなかなじむことができなかったことと、2005年に当時の種オスであった「フジタ」が死亡してしまい、このままでは繁殖が望めないことから、2006年に埼玉県こども動物自然公園へ移動することになりました。移動後、ルルは現在の当園の種オスである「ジル」を出産しました。
2頭目は、2007年にいしかわ動物園から来た「アミ」です。ルル同様、群れから離れてすごすことが多く、当時の種オスであった「カンスケ」との交尾行動はほかのメスと比べるととても少なく、数える程度しかありませんでした。係員に対する警戒心もなかなか解けず、係員と距離を取る行動が長らく続きました。繁殖に至らないままカンスケが死亡してしまい、アミの子どもを期待するのは難しいと感じていました。
しかし、次の種オスとしてたジルはほかのメスと同様にアミとも相性がよく、何度も交尾行動を確認するようになり、2017年に初めて出産しました。来園してから10年という月日が経っていましたが、妊娠が判明したときは、うれしい気持ちと同時に、初産にしてはやや高齢であることが心配されました。興味深いことに出産後のアミは明らかに係員に対する警戒心が和らぎ距離も近くなりました。
3頭目は2021年に市原ぞうの国から「トナ」が、4頭目は安佐動物公園から「アカリ」が今年来園しました。2頭とも群れの一員としてすっかりなじんでいますが、トナは人懐っこく係員に近づいてくるのに対し、アカリはアミと同様に警戒心が強く、係員と距離を取っています。対照的な2頭が今後成長とともに、どのように変化していくのか楽しみにしています。
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群れ入り当日の「トナ」(いちばん手前) (撮影日:2021年10月19日) | 係員がいると距離を取る「アカリ」(後ろにいる個体) (撮影日:2022年6月23日) |
現在は2頭とも群れになじんでいるようす
(撮影日:2022年7月17日)
〔多摩動物公園北園飼育展示係 清水〕
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