アジアゾウのオス「アヌーラ」が新アジアゾウ舎に移動し半年が過ぎました(
お知らせ)。アヌーラは今年推定で65歳を迎えました。老化による衰えは見られるものの、食欲や体格は移動前と変わらず元気に過ごしています。旧ゾウ舎では体重は測れませんでしたが、定期的に体重測定ができるようになり、3,800キロ前後を維持していることがわかりました。
新アジアゾウ舎の床は、足や蹄への負担を軽くするために、厚さ2メートルほどの砂を敷き詰めてあります。アヌーラの足の裏は以前見られたような過剰なすり減りがなくなり、蹄のひび割れも少なくなりました。
また、天井からえさを吊るすことのできるウインチが数か所設置されており、自然に鼻を伸ばしてえさが食べられるようになっています。ゾウの鼻はじつは数百キロもあってとても重たいのですが、この重たい鼻を持ち上げることで首や肩などの筋肉が発達し、健康な体格を維持することができるのです。
高齢のアヌーラは、歩行のスピードや一つ一つの動作はゆっくりですが、屋内を積極的に動きまわったり、高いところのえさを一生懸命に取ったりしています。夜は横になって寝ているので、リラックスして過ごしていることがわかります。
以前から見られている白内障は症状が進んでいるようですが、この半年で施設にも慣れ、どこに何があるのか理解し、不自由さを感じさせないスムーズな動きが見られます。
衛生管理上、砂を洗浄するためにスプリンクラーを定期的に動かしています。これまでアヌーラはスプリンクラーを避けるように行動していましたが、最近暖かい日には、みずからスプリンクラーの下に行き、水浴びをするようすが見られるようになりました。
毎年2回現れるオスのゾウ特有のムストと呼ばれる生理現象も、例年通り1月下旬から約2か月間見られました。一般的にムストの期間は気性が荒くなり、人に対して攻撃的になるため、飼育係としてははあまり好まれない時期なのですがが、アヌーラにこの攻撃的な行動が現れると、まだまだ長生きしそうで担当者としては何となくほっとする期間でもあります。
移動前から実施していた、「PCウォール」(Protected contact wall:下記関連記事をご覧ください)を使用したトレーニングは、移動後も続けています。目が不自由でも、担当者が出す音を頼りに積極的な反応が見られます。
とはいえ、これから老化による視力の低下や体の衰えは進んでいくことが予想されます。できるかぎり細やかなケアができるよう、今後の飼育管理にもより一層注意を払おうと思っています。
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〔多摩動物公園南園飼育展示係 藤本卓也〕
(2018年05月04日)