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続・アジアゾウのトレーニング
 └─2014/12/19

 現在、多摩動物公園ではアジアゾウ3頭に対し、「PCウォール」と呼ばれる柵を用いてトレーニングをおこなっています。昨年2013年4月から開始したこのトレーニングについては、こちらの記事でご紹介しました(「PCウォールを使ったアジアゾウのトレーニング」)。

 トレーニングは四肢のケアや採血等の健康管理がおもな目的ですが、このたびゾウの肢を繋留するためのトレーニングを開始しました。これはゾウの引越しの際、輸送箱の中で暴れないよう両前肢を繋留しておくための訓練です。新施設への引越しは数年先の予定ですが、時間をかけて慣れさせるために今からトレーニングを進めておく必要があります。肢の繋留には、ゾウの肢に合わせて布製の帯と金属の留め具で作った「アンクレット」と呼ばれる用具を使用します。


布と金属でできた「アンクレット」を装着したところ


 まず肢に物が巻かれる感触に慣れさせる必要があります。そこで最初は細いロープを使用し、段階を踏んで慣らしていきます。ふだんのトレーニングで前肢を上げさせるときに使う小窓にロープを垂らし、軽く肢にロープを当てます。次にロープをゾウの肢に巻いたり擦りつけたりして、徐々に慣らしていきます。

 もしゾウに取られて食べられてしまっても大丈夫なように、最初のロープは麻紐を使い、その後、ナイロン製の少し硬いロープを使用しました。これをクリアしてようやくアンクレットを使えるようになります。


ロープを使って練習中


 こうしてメスの「アマラ」には両肢にアンクレットを装着できるようになりました。しかし若いオスの「ヴィドゥラ」はロープやアンクレットの肢への接触が気になるようで、アマラに比べトレーニングの進み方がゆっくりでした。

 ある程度ゾウが慣れるまでトレーニングはすべて先輩職員がおこなっていました。しかし、段階が進むにつれて、ようやくゾウ飼育暦2年目となった私も少しずつ携わるようになりました。先輩の指導のもと、慎重に進めているつもりでしたが、ヴィドゥラがアンクレットを気にしていることに気がつかず、鼻で取られてしまうこともありました。そうなると、私の焦る気持ちを見透かすかのように、ヴィドゥラは面白がってわざとロープを取ろうとしてきます。

 そのような失敗もまだまだ多いのですが、少しずつゾウの反応が変わってくると、トレーニングが順調に進んでいるという実感がわいてきます。現在、新しいアジアゾウ舎を建築中ですが、完成後の引越しに向けて、ゾウと同じく飼育係も成長しなくてはいけません。トレーニングをご覧になる際、ロープを取られて呆然としている飼育係を見かけても、暖かく見守って頂けると幸いです。

〔多摩動物公園南園飼育展示課 伊藤達也〕

(2014年12月19日)


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