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極寒の海で卵を守るアンタークティックスパイニープランダーフィッシュ
 └─2018/10/26

 葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「北極・南極の海」コーナー、南極IIIの水槽では、アンタークティックスパイニープランダーフィッシュ(以下プランダーフィッシュ)が卵を保護しているようすが見られます。プランダーフィッシュは南極の浅い岩場に生息する魚で、これまでにもこの魚のユニークな繁殖生態について何度かお知らせしました。

困ったときはおたがいさま?アンタークティックスパイニープランダーフィッシュ」2007年11月30日
産まれた子どもを食べちゃう(!?)魚」2008年2月22日
しっかり卵を守るはずが──プランダーフィシュの子育て」2011年10月28日


卵を守るアンタークティックスパイニープランダーフィッシュのメス

 産卵したプランダーフィッシュは2018年2月に南極で採集した個体です。展示水槽内に少し広い空洞ができるように組んだ岩の隙間にきれいに卵を産みつけてくれました。上から光が差し込むようにしてあるため観察しやすく、まさに狙い通りの場所です。

 プランダーフィッシュは卵を守っているあいだ何も食べないのかと言うと、水槽内ではそうでもありません。オキアミを水槽内にまくと、少し間をあけてから岩陰から飛び出てて来て、えさをくわえます。すぐに戻るかと思いきや、しばらくその場所でたたずんでえさ飲み込むという意外に余裕のある行動です。


卵の周囲を警戒するプランダーフィッシュのオス(右下の赤い個体)とメス(左上の岩のような色をした個体)

 現在、おもに卵を保護しているのは岩と同じような体色のメスですが、体の赤いオスもときどき保護しているときがあります。メスが卵を保護しているときも、オスは産卵場所の上にある石の上に陣取り、近づいてきたゴーディノトセンを追い払っています。

 9月12日に産みつけられた卵が孵化するまで約3か月間、懸命に卵を保護する親たちを応援しながら見守っているところです。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 小味亮介〕

(2018年10月26日)


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