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しっかり卵を守るはずが──プランダーフィシュの子育て
 └─葛西  2011/10/28

 3度目の登場となる南極の生物、アンタークティックスパイニープランダーフィッシュのお話です。この魚の「卵を守る」習性などについては、すでにご紹介したとおりです。

・石の上などに産みつけた卵を保護するメスやオス
 「困ったときはおたがいさま?」(2007年11月30日)

・孵化した子どもを少し離れたところまでくわえていって放す親
 「産まれた子どもを食べちゃう(!?)魚」(2008年02月22日)

 今回は2011年8月15日に、石の上に産卵した親魚のお話。いつものように、すぐに卵を保護し始めると思いきや、産んだ母親は石の下や離れたところに隠れてしまい、いっこうに卵を守りません。
 観察を続けていると、1か月も過ぎたころからだんだん親の自覚が芽ばえ始めたのか、卵を守る姿が見られるようになりました。しかし1日のうち半分くらいはどこかに行ってしまったりして、あまり熱心ではありません。それでもしばらくすると長い時間卵の上にいるようになり、別のプランダーフィッシュが卵に近づくと激しく追い払うようにまでなりました。

 今回なぜ初めのうち卵保護をしなかったのか、はっきりとした理由は分かりません。ひとつ考えられることは、この水槽には同種のプランダーフィッシュが合計4尾入っていて、ほかにはヒトデが4個体いるだけで、すぐに卵を食べてしまいそうな生物はいません。水槽での生活が長いので少し気がゆるんだのでしょうか?
 ともかく、この卵は食べられることもなく順調に育って、発眼卵(発生が進み、眼がはっきり確認できるようになった卵)にまで育ってきました。発生は順調なようで、小さな孵化した子どもたちが泳ぎ出てくるのも間近なようです。葛西臨海水族園にお越しの節は、ちゃんと卵を保護しているプランダーフィッシュと孵化間近の卵を、ぜひごらんください。

写真上:卵を守らないメス(岩の左下)と岩の上の卵
写真下:卵を守り始めたメス

〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕

(2011年10月28日)



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