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捕獲せよ!──大型猛禽類の移動
 └─多摩  2009/03/06

◎捕獲せよ!シリーズ第5弾
 「木には止めるな!飛ばしまくって捕まえろ!」作戦


 多摩動物公園では、高さ20.5メートル、広さ 1,126平方メートルの「フライングケージ」で大型猛禽類が飛び回るようすを見ることができます。今回、塗装工事をおこなうため、ケージ内のイヌワシ、オジロワシ、オオワシなど、5種22羽の猛禽類を移動することになりました。

 高いところにとまる猛禽の捕獲は簡単ではありません。そこで、アユ釣り用の釣り竿の先端に黒いゴミ袋をつけ、これを振り回して猛禽が木に止まるのを邪魔します。頼りなさそうな道具ですが、先人の知恵が詰まっています。木に止まることができない猛禽は、疲れて地上に降りてしまいます。そこをすかさず、網や熊手で捕まえるのです。名づけて、「木には止めるな!飛ばしまくって捕まえろ!作戦」です。

 2009年2月7日、集まった飼育係は総勢30人。この30人がケージに入るやいなや、猛禽たちがバサバサと飛び交い始めました。気合いの入った飼育係の圧迫感に怖れをなしたのかもしれません。飼育係が配置につく前から、猛禽たちは地上にどんどん落ちてきます。

 しかし、ここで焦ってはいけません。一度つかまれてしまうと、鋭いツメが強い力で肉に食い込み、放してくれません。考えただでも冷や汗が出ます。

 飼育係は猛禽たちを続々と捕獲──あっさり終了かと思いきや、最後の2羽が曲者でした。オスのイヌワシ「紫雲」(しうん)は頭脳派で、釣竿の届かない木の枝に止まってしまいました。紫雲をつついたり、木をゆすったりしても、紫雲は枝から枝へと移り渡り、なかなか地上に降りてきません。

 もう1羽の曲者はメスのオオワシで、こちらは体力派です。体の大きいオオワシは身軽なイヌワシとちがって飛び回るのが苦手です。そこで、釣竿が届かない場所の金網にしがみつき、じっと耐えていました。

 作業開始から全羽捕獲まで約1時間。そのうち、イヌワシの紫雲との戦いは15分。オオワシにいたっては、なんと40分も金網にしがみついていたのです。しかし最後には、飼育係のチームワークと腕が勝利したのでした。

 現在、仮住まいに移され、捕獲の恐怖も忘れ、おだやかにくらしている猛禽たち。塗装が終わったら、フライングケージに戻らなければなりません。また、捕獲されることを知ったら、ゾッとすることでしょう。

写真上:捕獲される前のイヌワシたち
写真中:竿を手にしてハシゴをのぼる職員
写真下:高いところでぶらさがるオオワシ

〔多摩動物公園南園飼育展示係 吉田真理子〕

・捕獲せよ!シリーズ

  第1弾:ヒマラヤタール
  第2弾:ニホンコウノトリ
  第3弾:タヌキ
  第4弾:ツル類
  第5弾:フライングケージの猛禽類(本記事)

(2009年03月06日)



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