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ヒマラヤタールの角を切れ!!
 └─多摩  2007/06/29
 「ヒマラヤタール」という動物をごぞんじでしょうか? 多摩動物公園でも、おそらく一二を争う目立たない動物ではないでしょうか。一見すると野性味あふれるヤギのようですが、同じウシ科でも、ヤギはヤギ属、ヒマラヤタールはタール属です。タール属の属名も「半ヤギ」という意味だそうです。

 今回は、その地味~なヒマラヤタールについてご紹介します。

 多摩動物公園では、オス3頭、メス7頭、子ども4頭のヒマラヤタールを群れで飼育しています。2007年6月初旬、1頭のオスのお腹から血が出ていました。捕獲して治療したところ、ほかのオスに角で突かれたことがわかりました。群れにこのオスを戻すと、ふたたび攻撃されるおそれがあります。

 そこで、ケンカをしても角が刺さらないよう、問題のオスの角の先端を切ることにしました(いちばん大きなオスは、ケンカが起こらないように、隔離して飼育しています)。

 開園前に飼育職員19名が集合し、捕獲作業にとりかかりました。ヒマラヤタールは動きが俊敏で、高くジャンプすることができます(飼育舎の屋根に足跡があったという話も聞いています)。万が一、柵を飛び越えたら大変ですし、骨折などの大ケガがあってはいけません(もちろん、人がケガをするのも防がねばなりません)。

 そこで、群れを放飼場の隅に追い込み、捕獣網で絡め取る作戦を立てました。作戦を開始し、うまく群れを追い込んだところで、放飼場内の木立などを使って、捕獣網を張ります。網を少しあけ、そこからメスと子どもを追い出しつつ、目的のオスが動くのを待ちます。オスが網の隙間から逃げ出そうと突っ込んできた瞬間、網を閉じ、オスの体が絡まったところを2~3人が飛びかかって押さえ込みます。強力な脚の力と鋭い角には油断するわけにはいきません。

 無事押さえ込み、獣医が角の先端を切り落として、作業終了。

 これで、オスどうしのケンカによるケガがなくなることを祈るのみです。しかし、オスは角を研ぐしぐさをよくしているので、ふたたび先端が鋭くなる可能性があり、今後も要注意です。

 このヒマラヤタールの群れで、今年は出産ラッシュをむかえています。現在(2007年6月26日)、4頭の子どもたちが元気に放飼場を走り回っています。今がかわいい盛りです。多摩動物公園にぜひおいでください。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 吉田真理子・大橋直哉
 写真:昆虫園飼育展示係 川崎泉〕

(2007年6月29日)



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