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ニホンコウノトリを捕まえろ!!
 └─多摩  2008/03/14

 好評(?)につき、「動物捕獲シリーズ」第2弾として、2008年1月30日におこなったニホンコウノトリの一斉捕獲についてご紹介します。(第1弾は、2007年6月29日掲載の「ヒマラヤタールの角を切れ!!」)

 モウコノウマ舎の上に位置する「ウマ上コウノトリ舎」では、三つの放飼場でニホンコウノトリを中心に飼育しています。そのうち最大の放飼場を「ヤングケージ」と言い、若い個体や繁殖の優先順位が低い個体を飼育しています。その数、なんと48羽!! 国内のニホンコウノトリ総飼育羽数が 194羽(2007年12月31日現在)ですから、ここだけで国内飼育羽数の約4分の1を占めているのです。あわせて、ここにはナベコウ9羽、ツクシガモ13羽が同居しています。

 ここ2年ほど一斉捕獲をおこっていなかったため、仮切りしてあった風切羽も生え、多くがみごとに飛べるようになっていました(片翼の風切羽を切ると、羽ばたいた際のバランスが悪くなり、飛べなくなります。仮切りなので、また生えてきます)。

 コウノトリが飛び回るすがたは迫力があり、美しいのですが、驚いたりして飛び回った拍子に金網に激突して死亡してしまう危険性が高いため、飼育係としては、常にヒヤヒヤしている状態だったのです。危なっかしいので、ちょっとした作業でも驚かせないように、飼育係はゆっくりとした動きしかできませんでした。そこで今回は、ヤングケージ全羽を捕獲し、飛行抑制のために、風切羽の仮切り、体重計測、はずれてしまった足環の再装着をおこなうことになりました。

 午後1時、飼育展示課の職員を中心に35名が集合。まず、ヤングケージを黒幕で半分に仕切って、飛び回る範囲を狭くします。高さ約4メートルのケージの天井には3名が登り、飛行を抑制するとともに、万が一の金網への衝突事故を防ぎます。

 続いて、捕獲班と保定班に分かれます。保定班は、コウノトリが黒幕の隙間から抜け出るのを防ぐため待機します。そして、捕獲班はいっせいに捕獲に取りかかります。捕獲班は捕獣網をコウノトリの頭にかぶせ、ひるんだすきに抱きかかえます。そして、待機している保定班のもとへといそぎ、コウノトリが暴れないよう、袋に入れて保定します。こうしておけば、体重の計測も、個体の確認も楽ですし、逃げ出すこともありません。

 飛び回るコウノトリたち、それを追いかけまわす飼育係。おたがい必死になっての捕獲劇。ただただ、事故のないことを祈るのみです。

 約1時間後、恐れていた事故もなく、コウノトリ49羽+ナベコウ9羽+ツクシガモ13羽の全羽捕獲作業を無事終えることができました。風切羽も仮切りし、事故の危険性も格段に低くなりました。美しく飛び回るすがたは見られなくなってしまいましたが、これも安全に飼育するためですので、ご容赦ください。

 当然のことですが、捕獲作業が怖かったのか、以前は餌を与えるとすぐ食べにきていましたが、約1か月間、警戒して近くに寄って来ませんでした。最近、やっと落ち着いてきたらしく、以前の状態に戻ってきて一安心です。

写真上:捕獲班の勇姿
写真中:保定班による迅速な保定
写真下:つかまったコウノトリたち(ケンカしないでね)

〔多摩動物公園南園飼育展示係 大橋直哉〕

(2008年03月14日)



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