今年も多摩動物公園のヨーロッパフラミンゴが繁殖しました。今回も
昨年と同様、巣台に擬卵を置いて、繁殖行動を促した結果、4月中旬から産卵し始め、5月の後半には次々と孵化し始めました。7月末現在、ひなは20羽孵化して、順調にすくすく育っています。
じつは今年のフラミンゴの繁殖期に少し珍しいことがありました。
フラミンゴの「白48」「白7」という2羽が昨年度からペアを形成しました。この2羽はほかのフラミンゴと同様に卵を温め、孵化させ、ひなをしっかり育てていました。何も違和感がないように感じるかもしれませんが、じつはこの2羽はどちらもオスでした。このように同性でペアを形成することは、フラミンゴに限らず多くの鳥類で確認されている事例ですが、同性のペアが孵化までいたった事例は、多摩動物公園の過去10年の記録のなかでは確認できませんでした。

ひなを守り育てるヨーロッパフラミンゴ
さて、ここで「フラミンゴはオスどうしでも卵を産んで、ひなを育てることができるのか?」という疑問を抱く方もいるかもしれません。まず、卵についてですが、卵を産むことができるのはメスだけです。おそらくこの同性ペアはほかのメスが産んで放棄した卵を抱き始めた(あるいは卵を巣ごと奪った?)と思われます。
そして、ひなが孵化したあとについてですが、これはオスのみでもひなを育てることができます。フラミンゴは「フラミンゴミルク」と呼ばれる赤い分泌物を食道の一部の「嗉嚢」(そのう)から分泌して、ひなが固形物の採食を始めるまでのあいだはこのフラミンゴミルクを口移しで与えて育てます。これはオスとメス両方が分泌できるため、この同性ペアはほかの異性ペアと同様に、フラミンゴミルクをひなに与えて育てることができました。
なぜこのように同性でペアを形成するのかは明確になっていませんが、抱卵から子育てに関しては異性ペアと同性ペアで行動の差はほとんどないという報告もされています。今回確認できたのはオスどうしのペアでしたが、メスどうしの場合や、3羽で夫婦関係を築く場合もあるそうです。
いずれにしても、この同性ペアに限らず、2羽で協力して卵を守り、ひなを育てる姿は何度見ても尊敬の念しかありません。フラミンゴが子育てをしている姿を見ることができるのは、卵が孵化する5月~8月のあいだなので、ぜひこの時期に多摩動物公園に見に来てください。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 三松〕
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