多摩動物公園でオオフラミンゴが繁殖のシーズンを迎えています。現在105羽を飼育しており、過去の飼育数から考えると健康的に飼うことができる羽数なのですが、今後も健康的な個体群を維持していくためには繁殖を続け、産卵・育雛の経験をもつ幅広い世代がそろう、バランスの取れた個体群を維持する必要があります。しかし、残念なことに一昨年、昨年は繁殖の成功に至りませんでした。
フラミンゴの繁殖期は、発情し、集団でのディスプレイを経てカップルとなるペアをつくるところから始まります。そして成立したペアは行動をともにするようになり、交尾がおこなわれます。その後営巣するための場所取りをおこない、気に入った場所が見つかると土をかき集め、バケツをひっくり返したような塚状の巣台に卵をひとつ産んで、オスとメスで熱心に抱卵を始めます。
このシーズンが近くなると、担当者は営巣に適した場所に大量の巣の材料となる土を運び入れます。それだけでは元の地面が硬いため、塚をつくりやすいように土壌を耕してやわらかくし、軽く塚状になるように整えています。するとフラミンゴたちのディスプレイがより活性化され、土を触り、軽く集めるような動作が見られるようになります。一昨年と昨年は集団ディスプレイとペアの形成そして交尾までは多少確認できましたが、そこから営巣し産卵するという過程に行き着きませんでした。
そこで今年は、以前もおこなった整地に加えて、フラミンゴたちが好みそうな場所にお手製の巣台をいくつかつくり、ようすを見ることにしました。その巣台が気にいれば、手直しを加えつつそこで産卵するか、たとえ気に入らなくても営巣行動への刺激となり、その土を削り新たに自分たちで土を盛り上げて巣をつくることを期待してのことです。
現在は集団ディスプレイの勢いが徐々に落ち、ペアが成立してきているところです。作成した巣台に関心を示し、上に乗って巣台周りの土をくちばしで触ったり、座り込んだりするようすが見られ始めました。また、その近辺で他個体と場所の奪い合いのけんかも見られるようになりました。
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ペアが成立し、交尾をおこなう | 作成した巣台上に座り込む |
過去の例では、1羽が産卵して抱卵を開始すれば、それがほかのペアへの刺激となり、次々と営巣、産卵がおこなわれていたため、その第一号が現れるのを心待ちにしています。なかなか思うように復活しないフラミンゴの繁殖ですが、その兆しは現れています。期待と願いを込めて、フラミンゴが落ち着いて産卵し、子育てできる環境を整えるよう見守っていきたいと思います。
巣台周辺に集まるフラミンゴ
〔多摩動物公園動北園飼育展示係 山本〕
(2022年02月11日)