ニュース
フラミンゴ舎でみられる5年ぶりの光景
 └─ 2024/08/02
 多摩動物公園で飼育しているヨーロッパフラミンゴのひなが5年ぶりに生まれました。今回は繁殖行動からひなの成長のようすまでご紹介します。


ヨーロッパフラミンゴ

 フラミンゴの求愛ディスプレイは数種類の動作があり、首を左右に振る「旗振り」、両翼を広げて頭を下げる「敬礼」、いっせいに歩き出す「行進」といった行動が見られます(求愛ディスプレイについてはこちらの記事をご覧ください)。

 11月ごろから集団でこのような求愛行動が頻繁におこなわれるようになり、晴れて結ばれたペアたちは営巣場所を探し、交尾します。ペアになりそびれたフラミンゴたちはペアができるまで熱心にディスプレイを繰り返します。

 そんなフラミンゴの繁殖ですが、この5年間多摩動物公園のヨーロッパフラミンゴはディスプレイやペアの形成、交尾は確認できていましたが、産卵までにはいたりませんでした。繁殖しない原因を考え、フラミンゴが営巣するための泥場をふだん集まっている日影の多い場所にしてみたり、塚をつくりやすいよう土壌を柔らかくし、軽く塚状にしたりするなど試してみましたが、反応は今ひとつでした。

 フラミンゴなどの、集団で繁殖する鳥類は産卵の時期をそろえる傾向があります。そのため、擬卵(フラミンゴの卵に似せて作った偽物の卵)を設置することでフラミンゴの繁殖意欲を刺激してみることにしました。最初に5個の擬卵を飼育係が作った巣台の上に1個ずつ設置しましたがすべて落とされてしまいました。諦めずに2回ほど設置しなおしたところ、1ペアが抱卵し始めました。そのペアの抱卵をきっかけに1羽もいなかった営巣地にフラミンゴが集まり始め、擬卵を温める個体が増えました。


飼育係が作成した泥場で抱卵するフラミンゴ

 擬卵を設置してから約1か月後の2024年5月11日に1個目の産卵を確認しました。発見時、残念ながらこの卵は巣から落ちて割れていましたが、ほかのペアも産卵を始め、5月だけで28個の卵が確認できました。

 そして6月17日に最初のひなが孵化しました。なかには割れるなどして孵化までいたらなかった卵もありますが、その後も次々とひなが孵化し、7月中旬までに18羽のひなが生まれました。


生まれたばかりのひな

 フラミンゴは食道の一部である「そのう」から「フラミンゴミルク」という赤い分泌物を出します。このフラミンゴミルクが孵化したひなの最初のえさとなります。ひなは生まれてから早くて翌日には立ちあがり、立てるようになると巣を下りたり上ったりを繰り返し始めます。そして、4~15日ほどで巣立ち、「クレイシ」(フランス語で「保育所」を意味する「crèche」に由来)と呼ばれるひなの群れを形成していきます。

 現在は18羽でクレイシを形成しており、ひなたちのかわいい姿が見られます。


クレイシを形成するひな

 多摩動物公園のフラミンゴ舎にはフラミンゴのひなと同じくらいの大きさで色も少し似ているアカハシコガモも飼育しています。来園者の方からよくアカハシコガモを見て「フラミンゴの赤ちゃんだ」という声が聞こえてきますが、フラミンゴのひなの羽毛はグレー色でふわふわしており、くちばしが小さくとんがっています。足は細長く、黒っぽい色をしており、一人前に片足で立っている姿を見ることができるかもしれません。

 ぜひフラミンゴのひな集団を探し、観察してみてください。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 中村〕

◎関連記事
オオフラミンゴのひなの成長(2010年11月19日)
オオフラミンゴのペア事情(2014年09月19日)
オオフラミンゴ、ひなが巣立つまで(2015年05月01日)
汚れが目立つオオフラミンゴ、そのわけは…(2019年07月19日)
フラミンゴの求愛ディスプレイ「旗振り」「敬礼」「行進」(2021年01月02日)
フラミンゴの繁殖に期待を寄せて……(2022年02月11日)

(2024年08月02日)



ページトップへ