今回、ご紹介するのは沖縄の石垣島や西表島に分布しているゴキブリの一種、ヤエヤママダラゴキブリです。多摩動物公園昆虫園本館の
「虫とふれあいコーナー」での展示に向けて、現在はバックヤードで飼育しています。

ヤエヤママダラゴキブリの成虫
ヤエヤママダラゴキブリは日本最大のゴキブリと言われています。家庭によく出没する代表的なゴキブリであるクロゴキブリの大きさは約3cmですが、ヤエヤママダラゴキブリは約5cmにもなります。
また、ヤエヤママダラゴキブリはオオゴキブリ科に属しており、オオゴキブリ科はほかのゴキブリと違い、卵ではなく幼虫を産みます。自然界では、水際の小石や落ち葉の下などに生息しており、湿度が高い場所を好みます。幼虫は特に水辺を好み、水の中に入ることもあります。
昆虫園では、昨年の9月に石垣島で幼虫を採集し、バックヤードで飼育をしてきました。12月ごろから無事に羽化し始めたので、繁殖を目指しましたが、卵ではなく幼虫を直接産む昆虫のため、繁殖がうまくいっているのか確認するまでに卵生のゴキブリよりも時間がかかります。
ヤエヤママダラゴキブリの幼虫が生まれるまでの日数に関するデータがなく、数か月たっても幼虫の姿が見られないため、飼育ケース内の環境が繁殖に適していないのではと考え、飼育環境を変えてみることにしました。
野生の生息環境に近づけることを目指し、ケース内に水場をつくり、底面には湿らせた土を敷くことで湿度を保てるようにしました。また、隠れ場所として土の上に落ち葉を敷いていたのですが、大きな体では隠れにくい状態だったため木の板なども入れ、高低差をつくり落ち着ける場所を増やしました。水場に汚れがたまったら新鮮な水と入れ替え、2日に一度は飼育ケース内を水で濡らし、中が乾燥しないように気を付けました。

新しくした飼育ケース
このようなくふうをおこなった結果、今年の5月末に20匹以上の幼虫が生まれました。
現在はまだ展示はしていませんが、来年度の公開を目指し、今回産まれた幼虫たちが順調に成長したときには、幼虫が水に入っている姿や、日本最大の大きさをみなさまにお見せできればと思います。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 関本〕
◎関連ニュース
・
泳ぐゴキブリ飼育中(2007年01月12日)
・
丸くなる、愛らしい生きものといえば……(2021年03月06日)
・
嫌われがちな昆虫G(2021年05月14日)
(2023年11月17日)