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嫌われがちな昆虫G
 └─2021/05/14
 みなさん、ゴキブリは好きですか? ゴキブリは私たちにとってもっとも身近な昆虫の一つですが、残念ながらあまり好かれる存在とは言えません。テカテカと黒光りするボディーが嫌いという人もいるでしょうし、カサカサと動くあの俊足に恐怖を感じる方もいるかもしれません。

 しかし、人生において嫌いなものは一つでも少ない方がよいはずです。相手をよく知れば恐怖心も薄まり、家に現れたゴキブリにもうまく対処できるかもしれません。

 ──ということで、多摩動物公園昆虫園本館のふれあいコーナー(※2021年5月現在多摩動物公園は臨時休園中ですが、休園以前からふれあいは休止しておりました。再開園後もふれあい自体は当面再開できない見込ですのでご了承ください)であらたにクロゴキブリ、ワモンゴキブリ、コワモンゴキブリの展示を開始しました。この3種は人家に出没することが多く、チャバネゴキブリと並んで衛生害虫の代表です。都内の一般的な住宅ではクロゴキブリが大半を占めると思いますが、昆虫園のように一年中暖かい施設や沖縄などの地域では、ワモンゴキブリやコワモンゴキブリの割合が増えます。ちなみにチャバネゴキブリは飲食店などで多く見られ、名前が有名な割に身近で見かけることは少ないため、今回は展示していません。

クロゴキブリ
ワモンゴキブリ
(翅がないのは幼虫)
コワモンゴキブリ

 ゴキブリとはち合わせるシチュエーションを再現するため、展示ケースはキッチンのシンクやゴミ捨て場などをイメージして製作しました。下の写真のように、ケースの上部には炭酸カルシウムの粉末が塗ってあります。ゴキブリは炭酸カルシウムが塗ってあると滑ってしまうので、登って出てくることはありません。アクリル越しであれば飛びかかってくる心配もありませんので、まじまじと観察していただけるのではないでしょうか。


クロゴキブリの展示ケース。ケース上部に塗ってある白いものが炭酸カルシウム

 昆虫園では、ほかにも南西諸島のヒメマルゴキブリ(下記関連記事)や外国産のメンガタゴキブリを展示しています。さらに、ヤマトシロアリなどのシロアリもじつはゴキブリのなかまです。ゴキブリと一口に言っても、さまざまな種がいることがわかります。たとえば、ツルツルしたケース側面を登れないメンガタゴキブリと、登れるほかのゴキブリたちの脚先にはどんな違いがあるのか……など、じっくり観察するとゴキブリの魅力に気くことができるかもしれません。

 ゴキブリの大多数は森林で落ち葉や朽木などを食べてくらしていますが、ゴキブリといえば家に現れる種類を外しては語れない!ということで、今回はクロゴキブリ、ワモンゴキブリ、コワモンゴキブリをご紹介しました。ふれあいコーナーでは現在、「家に現れる虫たち」というテーマでの展示準備を進めています。ゴキブリはちょっと苦手な方も、かなり苦手な方も、ちらっとだけでも見に来ていただけたら嬉しいです。

・関連記事「丸くなる、愛らしい生きものといえば……」(2021年3月7日)

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 角田〕

(2021年05月14日)



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