人間が足を動かして歩いたり走ったりするように、魚はひれを使って水中を泳ぎ回っています──というのは誰でも知っていることですが、泳ぐためではなく、ひれをそれ以外の目的で使っている魚もいます。ひれを使って歩いたり、えさを捕まえたり、ひれで何かにくっついたりする魚もいるのです。
葛西臨海水族園「深海の生物1」水槽にいるキホウボウは、胸びれのそばにある足のような「ひれすじ」を使って海底を動いています(
写真上)。このひれすじは胸びれの一部で、ここには味蕾(みらい)という器官があり、えさを探すのにとても役立っています。キホウボウは、深海という暗い海の底で歩き回りながらえさを探しているのです。
「北アメリカ東岸」水槽にいるアンコウのなかま、グースフィッシュの頭の上には、先端にふさのついた棒のようなものがあります(
写真下)。このふさを上手に動かすと、えさとまちがえて近づいてくる魚がいるので、グースフィッシュは大きな口で飲み込んでしまいます。この棒のようなものは背びれの一番前のとげで、先端のふさを発光させるチョウチンアンコウはみなさんもよくごぞんじのことと思います。
「チリ沿岸」水槽にいるペヘサポは、泳いでいるよりも、水槽の壁にペッタリくっついてじっとしていることが多いでしょう。ペヘサポは聞きなれない名前かもしれませんが、ウバウオのなかまで、日本近海にも数種類います。ペヘサポが何かにじっと張りついていられるのは、腹びれの変化した吸盤をもっているからです。潮の流れの速い場所で岩や海藻にピッタリとくっついてくらすペヘサポにとって、吸盤は強い流れに流されないために役立っています。いつもは水槽の壁にくっついてじっとしていますが、壁づたいにすべるように泳いだり、流れてきたえさをすばやく食べることもあります。
・ニュース「
海底を歩く魚、キホウボウ」
(2008年07月)
・ニュース「
スローモーションで見るアンコウの摂餌」
(2007年07月) (動画あり!)
・ニュース「
くっつく魚をさがしてみよう!」
(2004年09月)
〔葛西臨海水族園飼育展示係 牧茂〕
(2009年06月19日)