2009年5月7日、葛西臨海水族園の「インド洋」の水槽に、イワカワハゴロモという貝が仲間入りしました。
イワカワハゴロモは、和歌山県以南の潮間帯や藻場に生息し、海水中のプランクトンなどを食べます。ニマイガイ綱ハボウキガイ科に属し、名前の通り、羽箒(はぼうき)によく似た三角形をしています。
この貝は殻がうすく、とてももろくて、指でつまむだけで簡単に割れてしまいます。そのためか、三角形の鋭角部分を地面に突き刺すようにして、砂の中に潜ります。鋭角部分に近い長辺からクモの糸のような「足糸」を出し、地中へ徐々に体を引きずり込むように潜って行きます。
しかし、潜るまでに非常に時間がかかります。一昼夜かかっても、潜るどころか、まだ起き上がれないといったこともあります。(同じように地中に潜る貝でも、マテガイにくらべると、その差は一目瞭然。葛西臨海水族園のイベント「干潟の生物観察会」にご参加いただくと、マテガイの潜行もごらんになれます。)
葛西臨海水族園では、これまでも裏側でイワカワハゴロモを何個体か飼育していましたが、横倒しのまま、殻だけになってしまう例が続いていました。むりやり砂に差してみたこともありますが、自立できないと、やはりダメなようでした。イワカワハゴロモが立つためには水槽内の礫(れき:小石など)がじゃまのようだったので、整地したり砂地をひろげてみたりしたところ、スガモ(海草類)のあいだで斜めに突き立っているすがたが見られようになり、ようやくほっとしているところです。
なお、水槽中央に横倒しになっているのは、見るとわかりますが、中身のない殻です。野生ではイワカワハゴロモの残骸を巣穴や隠れ家として利用する生物が多く、展示水槽内でもハタタテギンポが巣として利用し、殻の内側に生みつけた卵を保護しているところが見られるかもしれません(2009年5月16日現在、卵保護中)。
あらたな種類が登場し、生物の動きにさらにバリエーションの増えた「インド洋の水槽」、ぜひ楽しんでごらんください。
写真上:イワカワハゴロモ
写真下:イワカワハゴロモの殻に産みつけられた卵
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〔葛西臨海水族園飼育展示係 飛田英一朗〕
(2009年06月05日)