いってらっしゃいバステト、ようこそズラヤ

2026年10月2日

今年(2026年)6月、多摩動物公園と千葉市動物公園のあいだでチーターの相互移動をおこないました。これは、(公社)日本動物園水族館協会のチーター管理計画にもとづくものです。

今回、千葉市動物公園へ移動したのは「バステト」(メス、2018年8月25日生まれ)です。多摩動物公園ではこれまで3年間、飼育と展示をおこなってきましたが、繁殖に結びつかなかったことから、あらためて相手を換えて繁殖をめざすために、移動することになりました。搬出当日は、事前におこなっていたトレーニングのおかげもあり、輸送箱への移動もスムーズに完了し、いつもと変わらないようすで送りだすことができました。

一方、来園したのは「ズラヤ」(メス、2016年5月27日生まれ)です。ズラヤも、輸送箱からスムーズに寝室へ入り、職員から少量のえさを受け取るなど、あらたな環境のなかでも落ち着いたようすでした。

移動したバステトとズラヤ
移動したバステト(左)とズラヤ

今回の移動では、いつもと少し違う点がありました。それは、2頭の負担を軽減するため、事前に検疫をおこなったことです。

動物をほかの場所に移動する際には、その個体の健康状態や病原体の有無を確認し、移動先の衛生基準を満たしているかどうかを確認する「検疫」をおこないます。通常はこれらの検査を移動後におこなっているため、動物たちは、健康状態の確認ができるまでの1~2週間ほどのあいだ、寝室などの隔離された場所ですごさなければなりませんでした。

しかし、今回は千葉市動物公園の協力によって事前に糞便検査を済ませ、異常は確認されず、移動後も個体は落ち着いていて健康状態も良好だったため、来園翌日には検疫が完了し、ズラヤを広い屋外の展示場に出すことができました。

翌々日にはズラヤの娘である「カロリーナ」(メス、2021年6月8日生まれ)との再会も果たしました。格子越しに2頭を会わせてみると、たがいに近づくことも威嚇しあうこともなく……親子であっても、独り立ちした2頭のあいだにはチーターらしい距離感が保たれているようでした。

ズラヤの娘のカロリーナ
ズラヤの娘のカロリーナ

チーターは現在、野生において、生息地の減少や分断、獲物となる動物の減少、人との軋轢など、さまざまな問題に直面しています。今回のような動物園間の移動は、動物園において、チーターの保全に繋がる重要な取組みのひとつであり、それぞれの園で飼育する個体の情報を共有しながら、繁殖や遺伝的多様性の維持を目指しています。

今回の2頭の移動も、そうした連携の一環です。そして、動物園での飼育や繁殖を通じてチーターについて知り、野生のチーターを守るための関心を広げていくことも、動物園が担う大切な役割のひとつです。

ご来園の際には、彼らの行動をぜひじっくりと観察してみてください。彼らの行動や小さな変化を知ることが、チーターという動物を知り、興味をもっていただくきっかけになればと思います。

ナミビア共和国エトーシャ国立公園で筆者が撮影した野生のチーターの親子
野生のチーターの親子(ナミビア共和国エトーシャ国立公園:筆者撮影)

〔多摩動物公園北園飼育展示係 野澤〕

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