ニホンザルの出産と子育て、家族に関する話題
2026年5月22日
2026年4月30日現在、多摩動物公園のサル山ではオス32頭、メス36頭の合計68頭のサルたちが一つの群れとしてくらしています。
4月から5月にかけてはニホンザルの出産期になり、多摩動物公園では4月に6頭のメスが出産しました。生まれた子どもの性別はメスが4頭、オスが2頭でした。
ニホンザルの種における特性として、生まれてくる子どもの性比は1対1に収束することがわかっています。この特性により、地域や群れ内において事故などで一時的に性比の偏りが発生しても、長期的に見ればオスとメスの数はほぼ同数になって種の維持や種内の遺伝的多様性が保たれます。
しかし、今の群れ内ではオスが4頭少なく、これまでもオスの数が少なかった傾向があります。園内の過去の飼育記録を調べると性別による最高齢は、メスで32歳、オスで22歳であり、大きな差があります。オスでは闘争による外傷が死因であった例が多く、事故による死亡でメスと比較して短命な傾向にあります。したがって、この傾向が群れ内の性比でオスがやや少ない原因であると言えます。
サルたちの結びつきに0歳児から見た“家族”構成を当てはめてみると、「兄<祖母<姉<母」の順に関係が深くなります。
これら親密な“家族”関係に父親は含まれていません。なぜでしょうか? その理由は、秋に限られた繁殖期にメスたちはいっせいに発情して複数頭のオスとたくさんの回数の交尾をするためです。
このように、妊娠する前後に複数のオスと交尾するために母親が0歳児の父親を認識することは難しいことがわかります。
サルたちは自分の父親を知りませんが、群れ内個体の遺伝的多様性を保全するために、東京動物園協会の野生生物保全センターが遺伝子検査による父親判定を実施しています。
ニホンザルの場合、毎年初冬におこなわれる全頭捕獲時に約8か月齢の当年生まれ個体から獣医師が採血をおこなって血液サンプルを採取します。血液中の細胞からDNAを採取し、遺伝子解析検査で特徴的な複数の部位の塩基配列を個体ごとに特定します。
この情報が父親判定にも役立ちます。DNAは二本鎖構造であり、母親と父親から必ず一本ずつ遺伝子情報を受け継ぎます。母親は子が生まれてすぐ胸に抱くため、行動観察から個体が特定できます。過去の解析情報から親個体になる成獣の遺伝子情報はわかるので、母親からでないもう一方の遺伝子鎖から父親候補を推定することができるのです。
動物園では、このような科学的情報や行動観察記録を個体ごとに積み重ねることで、飼育動物の遺伝的多様性保全を目的とした個体群管理をおこなっています。
〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 由村〕

