葛西臨海水族園の
すきま風

文責/竹内正則 2002

 
 

はじめに

なぜ「愛称」がないのか?

ジミ系「南極の魚」

「なごみ場所」ベスト3

「死んだ魚」はどこへ


 

 

 

ジミ系「南極の魚」

南極のトイレでは、紙を水に流さないそうです。
何故なら、配水管が凍るから 。
さすが、南極です。

そんな南極で採集された、汗と涙と鼻水のつららの結晶
「ブルヘッド ノトセン」

ジミです。。

南極洋は、インド洋、南太平洋、南大西洋と接しています。
しかし、強い寒流が南極洋をとり まくように流れている為、まわりの海とのつながりが少ないです。
そのことにより、南極洋に いる生物は、南極洋固有のものがほとんどです。
いわゆる、ジミ系の魚です。

苦労して採取しているけれど、あまりにも見た目がジミというギャップがとてもいいです。
(ひねくれもの?)

1989年にはじまった南極採集は、現在も隔年でおこなわれています。
飛行機をのりつぎ、機中で2連泊するという長い旅のあと、やっと南極に到着するそうです。
南極のチリ空軍基地にある「ホステル」をベースキャンプにして、10日前後の採集をおこないます。

初年度は、トラップという仕掛けワナだけをつかって、採集をしていたそうですが、2年目にチリ海軍の兵隊がウェットスーツを着て、海に潜っているのをみてから、潜水での採集もおこなっています。

この2年目の時に、 チリ軍兵士の潜水しているのを見た「現飼育斑 班長 荒井さん」は、「
あいつらには、負けない」と、急遽ウエットスーツを取り寄せ、南極の海に潜った猛者だそうです。
きっと、南極の海にウェットスーツで潜った初めての日本人でしょう。
ウェットスーツは、その名のとおり、もぐれば濡れてしまいます。夏季とはいえ水温は2度ですので、大変なことです。今では、ドライスーツというもぐっても濡れない機材を使用しているそうです。

南極洋は水温が2度をこえない冷たい海ですが、冬には水温がマイナス2度にもなります。ふつうの魚なら凍ってしまう温度です。「ブルヘッドノトセン」は、体液中に特別な糖タ ンパク質をもっています。これが体が凍ってしまうことを防いでいるそうです。

また、水族園にはいませんが、南極洋にはコオリウオという魚がいます。まさに南極の魚といった 名前です。
このコオリウオには、ヘモグロビンが無いそうです。ヘモグロビンとは、血液の中に存在し、酸素を運んでいる大切なものです。

ん?

ってことは、酸素がいらない魚なのかというと 、そういうわけではありません。
血漿中の溶存酸素だけで酸素運搬をやっているという奇妙な魚なのだそうです。
めずらしい。

酵素だけで酸素運搬をするためには、血流量を多くしないと間に合わないので、血液の粘度が低くく、心臓が大きいそうです。また、血の量も多 いそうです。 そんな珍しい魚ですが、なんと昨年の南極採集の際の潜水採集で捕獲に成功したそうです。おおー。すごい。
が、陸にあがったら、捕獲ビンに入れたはずのコオリウオがいなかったそうな。
「たぶん、ちゃんとフタを閉めてなかったんですね」だそうです。

しっかり、フタを閉めよう。

そんなわけで、幻のコオリウオですが、南極採集をつづけているかぎり、いつか捕獲でき る日がくることでしょう。そして、この水槽で観察できるようになる日も遠くないことでしょう。 たのしみ。たのしみ。