葛西臨海水族園の
すきま風

文責/竹内正則 2002

 
 

はじめに

なぜ「愛称」がないのか?

ジミ系「南極の魚」

「なごみ場所」ベスト3

「死んだ魚」はどこへ


 

 

 

なぜ「愛称」がないのか?

動物園では人気の動物に、「リンリン」や「花子」などといったように愛称(名前)がつけられます。

場合によっては、名前を一般から応募し、メディアで発表するなどもされています。
しかしながら、水族館などでは、一部の海獣類などを除き(シャチとか)愛称がありません。葛西臨海水族園でも、正式に愛称のついている魚は1匹もいないのです。さみしいかぎりです。

なぜ、動物園は生物に愛称をつけて、水族園はつけないのか?


水族園では、入館者のこんな声をよく聞きます。


「おいしそー!」。


なぬ?
そうです。入館者は魚類を食物の延長線上として観察しているのです。

動物園のパンダの前で、「おいしそー!」といったらかなり厳しいです。 いやーな目で見られることでしょう。
しかし、一般的なイメージとしては、動物園は、かわいい、珍しい動物を観察できるところで、水族園は珍しい魚屋さんの延長線上に存在しているようなのです。暴論?
また、動物園の生き物にくらべて、水族園の生物は平均寿命が短いです。 そんなわけで、個別の名前(愛称)をつけて、いとおしむのが難しいのでしょう。

しかし、やはりさみしいではありませんか、水族園の生き物だってかわいらしくって、 すばらしい!
それならば、私が愛称をつければいいのだ(勝手に)。キラーン。


愛称を勝手につける計画始動。

まずは、同じことを考えている人がいないかチェックです。日ごろ魚達と一番接している職員さんに取材です。
「あのー、みなさんが独自にで結構ですので、あだ名・愛称をつけている魚とかって、いますでしょうか?」

職員さん
「昔は、いたようですが、、今は聞いてないですねー」
「アルバイトの子たちが、勝手につけたりは、しているみたいなんですけどね」


「ふむふむ」
「昔のあだ名・愛称でよいので、どんなものをつけていたか、教えていただけますか?」

「そうですね、「ポチ」とか」

「はっ?」


「ネズミフグっていう魚を担当していた子が、「ネズミフグ」にそうつけていたんです」

「ポチですか?」(おそるおそる確認)
「何故、ポチなのですか」(興味深々で確認)


「ポチみたいだから」


(・・・大丈夫か、水族園職員さん)

「餌をあげる時に、水面に上がってくる様子が、ポチのようだったのだそうです」

(ほほう。?。)


さっそく、世界の海の展示コーナーにある 「南シナ海(South China Sea)」の水槽にいる「ネズミフグ」をみてみました。
のんびりと泳いでいます。

けっこう、間の抜けた顔です。

和名「ネズミフグ」
英名「porcupinefish」
分類「フグ目 フグ科」
学名「Diodon histrix」
です。
この子は、水槽の右端にくると、かならず水面まで上っていって、口をパクパクします。餌をねだっているみたいでかわゆいです。
たしかに、なんとなく「ポチ」って感じがしなくも無い。うむ。
そんなわけで、ネズミフグ愛称決定!
「ポチ」


そういえば、この「ポチ」の分類「フグ目」の魚って、かわいくていい感じです。
ピキーン。

そんなわけで、水族園の中にいる全てのフグ目をチェック。

1時間後。

葛西臨海水族館には、全部で20種のフグ目の魚がいました。ふう。
以下のとおりです。

1、 ネズミフグ
2、 ハワイアン ホワイトスポッテット トビー
3、 ファンテールファイルフィッシュ
4、 ノコギリハギ
5、 シマキンチャクフグ
6、 オルネートカウフィッシュ
7、 ホースシューレザージャケット
8、 ホワイトバードボックスフィッシュ
9、 ミナミハコフグ(幼魚)
10、 スワロウルドカウフィッシュ
11、 カワハギ
12、 ヒガンフグ
13、 クサフグ
14、 ショウサイフグ
15、 シマキンチャクフグ
16、 イシガキフグ
17、 ナメモンガラ
18、 アミメハギ
19、ウマヅラハギ
20、サザングローブフィッシュ

です。って全部読んだ人います?
ふう。

そんな中から、ビビッときた魚は、一番最後の「サザングローブフィッシュ」
!

「オーストラリア南部 (Southern Australia)」の水槽にいます。
和名 「サザングローブフィッシュ」
英名 「Southern globefish」
分類 「フグ目ハリセンボン科」
学名 「Diodon nich the merus」
です。



かっかわいい。
犯罪的にかわいいです。逮捕。


水槽の中には、2匹の「サザングローブフィッシュ」がいるのですが、これがちょこちょこと上ったり、下りたり、右にいったり、左にいったり。もうっ、あいくるしい。

また、そのつぶらなひとみと、半開きの口!
たまりません。

色模様は、こころなしか三毛猫の雰囲気です。

むむ、「ネズミフグ」が「ポチ」(犬) ならば、「サザングローブフィッシュ」は猫の名前をつけるしかない。そうだ。そうだ。

で、2匹のうち、色のよりはっきりしている個体は、、、

愛称決定!
「ミケ」。(三毛猫みたいだから)

もう一匹、色のうすめの個体は、、、


愛称決定!
「タマ」。(猫の名前(勝手に)ベスト1 だから)


ええと、上の写真が「ミケ」で、 下の写真が「タマ」です。


そんなわけで、さらに取材です。

「他にも、同じように愛称のついた生き物っていますか?」

職員さん
「今はいないのですが、以前いたアオウミガメは、小笠原から貰ったもので、小笠原にいた時から「ターボー(ター坊)」って呼ばれていました。 」
「今は1歳になる別のアオウミガメがいます」

「なるほど」

とりあえず、今いるアオウミガメを見に行きました。
すると、丁度、餌をあげているではないですか。
これは、チャンスとばかりに現場の飼育員の方にも取材です。

「すみませーん、その子って名前はあるんですか?」

「ターボー、ですよ。」
(現場では、ばっちり同じ名前が引き継がれているようです。)


そんなわけで、アオウミガメ、愛称決定!
「ターボー」


「ターボー」はまだ子供のアオウミガメです。今は、東京の海の展示内にある「小笠原の海」の水槽にいます。

なんだか、ちょっと、顔が凶悪ぎみな「ターボー」です。


さて、マグロの水槽には、マンボウが2匹います。
「マンボウ」なんてすてきな名前でしょう。なんとも愛くるしく、ぼーとした顔や行動にもぴったりです。
そんな2匹の「マンボウ」に飼育員さんたちが、こっそり名前をつけているらしいという情報をキャッチしました。
それも、とても直接的な名前だそうです。

2匹のうち、大きいほうが、「大(ダイ)」。

小さいほうが、「小(ショウ)」。。。

このやる気のないネーミングが、「マンボウ」にぴったりと思うのは私だけでしょうか?

そんなわけで、マンボウ愛称決定!
大きいほうが、「大(ダイ)」


小さいほうが、「小(ショウ)」



さてさて、「マンボウ」のいるマグロ大水槽。
かつては、飼育員さんによって「ラグビー」とあだ名が付けられたマグロがいたそうですが(ラグビーボールみたいだから)、今は特別にあだ名がついた個体はいないようです。
残念。

ならば、つけようではありませんか。
葛西臨海水族園の目玉である「マグロ」に愛称がなくては、さまになりません(思い込み激しいです)。

ふむふむ。15分ほど観察すると、あきらかに体の大きな「マグロ」が2匹ほどいます。
体重100キロ以上はあるでしょう。全長も1メートル50センチ近くありそうです。

1匹は、目の下に黒いキズがあります。
水槽に当たったり、仲間とぶつかったりしたのでしょうか。

この顔にキズのある個体ですが、顔にキズといえば歌舞伎で有名な「斬られ与三郎」です!

いやさ、お富、久しいな〜。
そんなわけで、愛称決定!
顔にキズのある大きなマグロ 「与三郎」


もう1匹の大きな「マグロ」ですが、この個体がおそらく一番大きな「マグロ」です。
かなり立派です。
特徴な、その大きさと、右に曲がったヒレです。
尾ビレと、腹ビレの間のヒレがクリンと右に曲がっているのです。写真では判断しずらいですが、実際に観察するとかなり特徴的です。



右曲がりといえば、ちょっとHなマンガ「右曲がりのダンディ」末松正博 (講談社)が思い出されます。(強引?)
そんなわけで、愛称決定!
大きくて右曲がりのヒレのマグロは、
「ダンディ」


そんなわけで、8匹の個体にたいして、愛称が決定しました(勝手に)。
なんだか、愛称をつけたらより可愛らしくみえてきます。不思議なものです。

みなさんも、水族園に入園された際は、ぜひこの子達を探してあげてください。

そして、こっそり呼んでみてください。

そこはかとなく、たのしいです。ぺこり。