働き者のタツナミガイ
2026年9月25日
みなさんは「タツナミガイ」という生きものを知っていますか? 名前を聞くとアサリのような二枚貝や、サザエのような巻貝の形を想像されると思いますが、ちょっと変わったかたちをしています。
タツナミガイは細かい突起がたくさん生えた、藻類に覆われた岩肌のような質感をもつアメフラシのなかまです。一見すると貝には見えませんが、分類上は立派な貝のなかまです。体の中に軟体部に覆われた貝殻をもっているため、外側からは見ることができません。この貝殻のかたちが、海で逆巻いて立ち上がる「立波」(たつなみ)に似ていることが名前の由来となっています。
タツナミガイは葛西臨海水族園の「東京の海」エリアにある「東京湾 アマモ場」水槽で展示しています。この水槽では、海草の一種であるアマモを育てています。アマモが光合成できるよう強い照明を当てているほか、日光も入るため、すぐにさまざまな藻類が生えて汚れてしまいます。
そのため、毎週のように掃除のために潜水し取り除いていましたが、藻類が増えていくスピードの方が速く、少しずつ増えて砂の上に積もってしまっていました。そんななか、今年(2026年)の1月末にタツナミガイを搬入すると、砂の上に積もっていた藻類がみるみるうちになくなっていったのです。
なんと、タツナミガイが食べてくれていたのです。口のなかにある「歯舌」(しぜつ)という器官を使って食べるようすも観察できました。
タツナミガイにとっては大切な食物である藻類も、飼育係にとっては悩みの種。藻類を食べて水槽をきれいにしてくれるタツナミガイは、頼もしいお掃除のプロです。
ただ、働き者のタツナミガイは、日中はあまり姿を見せてくれません。よく探してみると砂が掘り返された形跡があり、何やら砂の中に埋まっているものが見つかります。じつは、砂に潜ることができるのです。基本的に夜行性といわれており、昼間は砂に潜ったり、すみっこの方で身を休ませたりすることが多いのです。
「渚の生物」水槽の浅場にあるタイドプールでも展示していますが、苔むした石のような見た目をしているため、見つけるのはなかなか難しいかもしれません。かくれんぼ上手なタツナミガイをよーく探して見つけてみてください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 坂本滉太郎〕

