金魚の落としもの?

2026年6月12日

葛西臨海水族園のレストラン「シーウィンド」内に、金魚を展示している「金魚水槽」があるのはご存知でしょうか。

金魚水槽
金魚水槽

単に美しいから展示しているわけではありません。金魚は葛西臨海水族園のある江戸川区と深い歴史的つながりをもっています。

明治時代以降、江戸川区は水が豊かであったことから金魚の養殖場が集まり、やがて金魚の三大産地の一つとして数えられるようになりました。現在では、都市化が進み、養殖業者は減ってしまいましたが、今でも毎年、金魚の展示や販売をおこなう「江戸川区特産金魚まつり」が開催されるなど、金魚との関わりが深い地域です。

展示している金魚、ワキンとコメットという品種が写っている
展示している金魚、ワキンとコメットという品種が写っている

そんな金魚水槽を開園前に掃除していると、ときおり、水槽の底に白くて小さなかけらが沈んでいるのを見つけることがあります。大きさはわずか2〜3mmほど。プラスチック片のようにも見え、最初は「何だろう?」と不思議に思っていました。

落ちていたかけら。1年間で集めたもので、形や大きさはさまざま
落ちていたかけら。1年間で集めたもので、形や大きさはさまざま

じつはこれ、金魚の歯だったのです。

「歯が抜けても大丈夫なの?」と驚く方もいるかもしれませんが、金魚の歯は一生のうちに何度も生え変わる仕組みになっています。

金魚が口を開けて水面をパクパクとしているようす
金魚が口を開けて水面をパクパクとしているようす

歯の生え変わりといえばサメが有名ですが、金魚にはサメのような鋭い歯は見当たりません。

金魚がもっているのは、のどの奥に並ぶ「咽頭歯」(いんとうし)と呼ばれる歯です。咽頭歯は、えさを噛みちぎるためではなく、固いものをすり潰して食べるために使っています。

金魚を含むコイ科の魚は、この咽頭歯がとくに発達していることで知られ、「そしゃく台」と呼ばれる部分と噛み合わせることで、しっかりと食べものを砕くことができます。金魚の場合、左右に4本ずつ、計8本が並んでおり、えさとなる動物も植物もすり潰せる、まさに万能の”歯”なのです。

身近な存在である金魚ですが、こうした仕組みを知ると、見た目の美しさだけでなく、生きものとしての不思議さや奥深さを感じられるはずです。

もうすぐ夏祭りの季節。金魚すくいでもらった金魚を飼育する際や「金魚水槽」を眺める際は、水槽の底に落ちている小さな”落としもの”をぜひ探してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 坂本滉太郎〕