ゴーゴー!南極探検隊

「世界の海」エリアの一番最後にある「北極・南極の海」コーナーの
3つの水槽をご覧になりましたか?
         
一見地味に思える小さな水槽ですが、この中にいるのは、水族園の人たちが手間をかけて冷たい海から連れてきた貴重な生物なのです。 このページでは、水族館の調査係の方にお伺いした内容をもとに、
極地での採集や調査の様子について紹介します。
  
南極へは1,2年に一度、数人の調査隊を編成して行きます。
調査場所は南極半島近くのキングジョージ島フィルディス湾
(南緯62°12'/西経58°55')で、この付近の海域は大型海藻が茂り、
比較的生物が豊富な場所として知られています。

拠点となるチリ空軍基地に日本から1tにもなる機材を運び込み、
十数日間滞在して調査や採集を行います。

  
「いやー寒い、寒いとしか言いようがない」(思い出して寒がる松山氏)
1月〜2月の夏に当たる時期でも、気温は0℃前後、水温は1〜2℃にしかなりません。
流氷の浮かんでいる極寒の海に極地用ダイビングスーツを着て潜っていると、好奇心の強いペンギンが近づいて来たりするそうです。

面白いと思ったのは、「0℃の海に潜るのと1℃の時に潜るのとでは全然違って感じられる」という話でした。
水温が1℃の時は40分〜1時間は潜っていられるそうですが、0℃になると20分位しか耐えられないそうです。
南極にいる間、だんだん痩せていくと聞いて驚きです。
  トラップ(網かごのわな)
生物はダイビングして探したり、トラップを仕掛けて集めます。
表層や中層を泳ぐ魚は見かけません(クリオネはいるそうです)が、
底の岩には海藻、イソギンチャク、ホヤ、カイメン、ケヤリムシなどが
付いています。
    
    ノトセン類
石や海藻の切れ端の下に隠れている貝やヒトデや甲殻類を一匹づつ手で拾って腰につけた容器の中に入れていきます。
また、トラップの中に魚の切り身を入れて数十mの海底に沈め、次の日に引き上げると、ノトセン類という魚、クモヒトデ、ヒモムシ、バイ貝などが採れます。
南極大陸は南極還流に取り巻かれ、水温差などの環境条件によって
周囲の海域と隔てられているので、北極に比べて固有種が多いそうです。
  巨大ホヤ群体(想像図)
他にも面白い生物がいますが、持って帰るのが難しいために展示できないことがあります。
水深30〜40mの深いところで、高さ10m以上もある筒状のホヤが煙突のように何百本と並んでいる光景を目にしたこともあるそうです。
群体をつくるホヤは海岸でもよく見られますが、さすが南極、スケールが違う。
  
厳寒の地で採集をこなす調査係の人たちにも天敵が・・・
ヒョウアザラシはペンギンを食うどう猛な海獣なので、
はちあわせしそうな時は採集を見合わせるそうです。
ちなみに北極ではシロクマと出会うと危険なので注意しなければいけません。
大変。
【リンク】南極の生物ガイドでヒョウアザラシや水族園で展示されている
やオドンタステル バリドゥス(ヒトデ)の写真が見れます。

Underwater Field Guide to Ross Island & McMurdo Sound, Antarctica
leopard seal のページ
http://scilib.ucsd.edu/sio/nsf/fguide/chordata.html
seastar Odontaster validus のページ
http://scilib.ucsd.edu/sio/nsf/fguide/echinodermata-1.html

【リンク】南極についてのレポート、面白い。
http://scilib.ucsd.edu/sio/nsf/gallery/index.html

  
苦労して採集した生物は、弱らないように氷詰めにして
できるだけ早く水族園まで輸送します。
それでも3日はかかってしまいます。
その後の飼育でも0℃前後に水温を保つのに気を配ります。
夏の暑い時など、水温を下げるために水槽に海水の氷を
投入することもあるそうです。

  

情報資料室のビデオ「南極から魚をつれてくる(27分)」は、
南極の採集の様子、かち割り氷を作っている人々、海水タンクの重さに腰砕けする荒井さん、チリ空軍の真っ黒な輸送機など見所が沢山です。

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