等脚類マニアックス

     じっと動かない・・・
「世界の海・深海の生物」コーナーの暗い水槽の底に
浮かび上がる巨大なダンゴムシのような生物・・・
  
水槽の前に来た人たちは「ワラジムシみたい」
「ゴキブリに似てる」「王蟲みたい」などと驚いています。
解説プレートを見ると、そこには
  
giant isopod
ジャイアント アイソポッド
甲殻綱 スナホリムシ科
Bathynomus giganteus
という表示が。
甲殻類っていうと、エビやカニの仲間ということかな?

分類では、ジャイアント アイソポッドは節足動物門・
甲殻上綱・軟甲綱のメンバーの等脚目に属し、
有扇亜目・スナホリムシ科の動物となっています。

  
実は、葛西水族園は、外国産の等脚類(アイソポッド)が
平成14年1月現在3種類も見られる貴重な水族館なのです。

このページでは、砂漠や淡水を含む陸上から、1万mを超える
深海域まで広く分布している等脚類の、ほんの一部の種類を
紹介します。

ジャイアント アイソポッド Bathynomus giganteus
  
ダイオウグソクムシとも呼ばれています。
大きな等脚類と言えば日本産のオオグソクムシ(体長15cmになる)
が有名ですが、ジャイアント アイソポッドは体長40cmになり、
等脚目のうち最大種!

【リンク】須磨海浜水族園 オオグソクムシのアップ
http://www.sakura-utopia.ne.jp/kobe/kobe-c/2000-01/osakana.html
↑鳥羽水族館にもいます

【リンク】ジャイアント アイソポッドびっくり写真いろいろ

Florida Aquarium's "EEEEEEK! Creatures from the Deep,"
http://www2.sptimes.com/Aquarium/EEEEEEK.html

ARE THESE LIVING TRILOBITES? (注意・画像が重いです)
http://www.omniology.com/Apus-LivingTrilobite.html


なぜこんなにサイズの大きい等脚類がいるのか?と疑問に思い、
abyssal gigantism(深海での巨大化)について調べてみました。
(検索エンジンで「深海 巨大化」を検索したら、「ウルトラQ」
の記事がたくさん出てきてしまった)

深海の魚などは、浅海のものに比べて体が小さいのが普通ですが、
無脊椎動物のうち甲殻類などにはサイズの増大するものがいるようです。
原因については諸説あるようですが、
@高い水圧下での特有の代謝が原因
A低水温と少ない食物で成長が遅くなるため成熟に時間がかかり、
また寿命も延びて体のサイズが大きくなる。
大きい個体は広い範囲にわたって食物や配偶者を探せる点で有利であり、
寿命が延びると長い間繁殖できるのでこれらの特性が進化した。
などの考え方があるそうです。

  
大西洋西部のメキシコ湾やカリブ海周辺、インド洋北部などの
水深350〜730mの深海に生息しています。
魚類や頭足類、その死骸まで食べる深海の掃除屋として知られています。
水族園にいる個体はカリブ産です。

情報資料室のビデオ「海底のそうじや スカベンジャー(15分)」
や「深海の生物(18分)」で死骸にたかるオオグソクムシが見れます。
這うだけでなく、体の後ろ側についている団扇のような足(腹肢)を
使って泳いで餌に集まってくる・・・
ジャイアント アイソポッドはもっと動きが鈍いそうですが・・・

アークティック アイソポッド Arcturus baffini
  
「世界の海」エリアの「北極・南極の海」コーナーの「南極海」の水槽をよく見ると、昆虫のナナフシに似ている、体長数cmの細長い生物が海藻や壁に<つかまっているのが見えます。
これはヘラムシ亜目・オニナナフシ科の等脚類で、
北極圏の10mより深いところの大型海藻の上に見られる種類です。
        
    
体の後ろのほうの足(胸肢)で土台につかまり、
前側にある足(胸肢)を流れに向かって構えて有機物をこしとって
食べるようですが、水槽の中では各自ポーズを取ったまま
動かず凍っているように見えます。
大きいのと小さいのがいるのに気づきましたか?
小さい個体は水族園で生まれた子供が成長したものなのです。
水族園で以前、卵からふ化した小さな幼体が
親の触角に鈴なりになっているのが観察されました。

【リンク】東京都葛西臨海水族園ガイドブックに当時の写真があります
http://tslp.sfc.wide.ad.jp/us/guidebook/07/07.htm

【リンク】海遊館の企画展極北パラダイス!「カナダ・北極圏の生き物たち」でも
     オニナナフシ類のの保護行動が見られました。
http://www8.gateway.ne.jp/~wandaba/kaiyu/special2001_arctic.htm
「オニナナフシ属の一種 02」という写真に注目!

また、等脚類の親戚の端脚(ヨコエビ)類であるワレカラの数種にも
親による子守行動が知られています。

グリプトノートゥス アンタルクティルス Glyptonotus antarcticus
    
「北極・南極の海」コーナーの「南極海」の水槽にいます。
ヘラムシ亜目・トガリヘラムシ科の等脚類。
体長は数cmから20cm程になります。潮間帯〜水深790mに生息し、
小動物や生物の死骸などを食べています。

【リンク】南極ガイドにグリプトノートゥスの写真があります
Underwater Field Guide to Ross Island & McMurdo Sound, Antarctica
http://scilib.ucsd.edu/sio/nsf/fguide/arthropoda-1.html

このページにある、カブトガニのような等脚類、セロリスの一種
(serolid isopod)も以前水族園で展示されていました。

情報資料室のビデオ「南極から魚をつれてくる(27分)」で
泥の上をゆらゆら歩くグリプトノートゥスが見れます。


*おまけ*

 水族園の調査係の誰かの机

  

【リンク】Glyptonotus antarcticusとSerolis pagenstecheriが切手になってるぞ!
http://www.antarktis.ch/faun5.htm


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