以前の記事で、上野動物園のアジアゾウ「アルン」(オス)が独り立ちしたあとの「スーリヤ」(メス)と「ウタイ」(メス)についてお知らせしました。今回は、その後のようすをお伝えします。
スーリヤとウタイは2021年と2023年、そして今年2025年2月にも同居を試みてきましたが、これまでの取り組みではいずれもうまくいきませんでした。2月に試みたあと、「この2頭が柵を隔てずにすごせるようにするのは難しいかもしれない」と感じ、しばらくは2頭を分離しながらも、二分割した放飼場をそれぞれが同じ程度の時間、交替しながら利用する生活に慣らすことに集中しました。
しかし柵越しの2頭を見ていると、互いに嫌っているようには思えず、鼻で触りあうなどコミュニケーションもとっており、再同居できる可能性を捨てきれませんでした。野生のゾウは血縁関係にあるメスを中心とした群れで助け合いながらくらしています。スーリヤとウタイは血縁関係にはありませんが、上野動物園で長くいっしょにくらしてきており、これから先も2頭で寄り添いながらくらせる状態を目指すことがまだできると信じ、再同居に向け取り組みを継続することにしました。
そこで、休園日や開園前の時間を使って放飼場を区切った短時間の同居を繰り返しおこない、2頭が同じ空間にいる時間・機会を増やす試みを始めました。飼育係がそれぞれのゾウについてえさを与えつつ、最初は2頭の距離を取りながら、少しずつその距離を近づけ、時間も長くしていきました。スーリヤがウタイを鼻で押したり叩いたりする行動はやはりありましたが、回数を重ねるごとに減ってきたように感じました。
同時に、日中に給餌するときや建物を出入りさせるときの動きをスムーズにできるようにするために、さまざまなパターンを試してきました。4月中旬からは開園日の日中にも一時的に同居させて放飼場所を入れ替える方法をとり、2頭がいっしょになる機会をさらに増やしました。

同居中のアジアゾウ「ウタイ」(左)と「スーリヤ」(右)
そして6月の休園日、放飼場を全面開放していっしょにさせたところ、これまでのようなスーリヤからウタイへの威圧的な行動はなく、それぞれが落ち着いて過ごしていました。2頭で同時に寝そべったりするなど、安心していなければしないであろう行動も見られ、私たちとしてもこれまでの苦労が報われたと感じました。翌日以降も観察しながら同居させ、2頭いっしょの新しい生活パターンを構築してきました。現在は日々の動きも安定し、健康管理のためのトレーニングも再開しています。
その後、2頭の関係は落ち着いていますが、これから先も注意深く観察を続けながら、ゾウたちにとってよりよい飼育環境にしていけるよう努めます。
〔上野動物園東園飼育展示係〕
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