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ゾウのいろいろな採食行動を引き出す
 └─多摩 2025/05/02
 野生のゾウは歩く、鼻を伸ばす、掘る等々……、一日のうち長い時間をかけて食べ物を探しながら採食しています。

 多摩動物公園のアジアゾウ舎では、ゾウの鼻や足を使う能力が発揮されるよう、給餌の際にさまざまな取組みをおこない、ゾウの健康管理や展示の充実を図っています。

 今回は、私たちアジアゾウ担当の取り組みとゾウがどのように採食しているのか紹介します。

高いところに鼻を伸ばす

 多摩動物公園のアジアゾウ舎は、高所にえさを入れたフィーダー(給餌装置)を吊るすことができるようになっています。これにより、鼻を上げて食べ物を取るというゾウ本来の動きが引き出され、首や肩の筋肉が鍛えられることで適切な体型を維持することが可能となります。少し高めにフィーダーを吊るすと、簡単には鼻が届かないため、ゾウは近くにある丸太やガス管を踏み台にしてえさを取ります。


ガス管を踏み台にして高いところの餌を取るアマラ(メス)

地面を掘る

 アジアゾウ舎のもう一つの特徴は、施設のほぼ全面に土や砂が敷かれていることです。屋内の砂地の深さは2mほどあり、ゾウが砂浴びできるほか、四肢への負担を軽減したり、起伏のある地形を作って運動量を増やしたり、ゾウを飼育管理するためのさまざまなメリットを生み出します。

 この砂地にえさを埋めることで、ゾウは匂いを頼りにえさを探して歩き回る、穴を掘る、食べ物を鼻で地中から取り出して食べる、などの行動を引き出すことができます。


埋められた餌を食べるために前足で砂を掘るアジアゾウのアマラ(0.5秒間隔のタイムラプス撮影を0.5秒間隔のまま再生)


前足を折り曲げて餌を取る

 砂地にはえさだけではなく、フィーダーも埋めることができます。長いガス管を砂山に差し込むように埋めてえさを入れておくと、ゾウは奥に鼻を伸ばしてえさを取ります。この際、前足を折り曲げるとさらに奥に鼻が届くようになります。歩き方を含め、これらのゾウの動きは、私たち飼育係がゾウの足の状態の良し悪しを判断する材料のひとつとなります。


左前肢を折り曲げて、砂山に埋めたガス管の奥の方の餌を取るアマラ

フィーダーを転がして餌を取り出す


 採食行動を多様化させるためにアジアゾウ舎にはさまざまなフィーダーがありますが、鼻や足で転がし、下に向いた穴から内部のえさが落ちるようなものもあります。これまで紹介してきたものも同様ですが、ゾウがえさを取るのに時間がかかり、退屈な時間を減らすことに繋がります。


フィーダーを転がして摂餌するアヌーラ(オス)

 動物園でくらすゾウの能力が発揮される機会を増やし、豊かで充実した時間を過ごせるようにすることが、私たち飼育係の大切な仕事です。そして、私たちの取組みが動物を介して来園者の方々に伝わり、動物園で過ごす時間が楽しく実りあるものになれば幸いです。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 兒島〕

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